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第四夜 天使の裁き 12
だけど今は違う。
詩歌の真っ直ぐな瞳を見れば、彼の思いがひしひしと伝わってきた。
彼がどれほど仲間を欲していたか、魔法の事を真剣に考えていたか…。
なのに彼女は嫉妬の感情に負けて魔法を使った。
どうでもいい理由で魔法を使った事に、野絵は憤慨していたのだ。
「……醜いですって、このアタシが?!」
わなわなと体を震わせ、真砂は小さく呟く。
瞳に笑みはもう無く、声はかなり低音になっていた。
「もう一回言ってみろ……、このブス女ぁあっ!!!!」
頭に血が上った真砂は荒い口調で叫ぶと、躊躇無く野絵の首を掴んだ。
「…っ?!」
「お前みたいなブス女は泣きわめいて許しを乞えばいいんだよ!!クククッ、ほら泣けよ!ブス!!」
すっかり豹変してしまった真砂に野絵は危機感を覚える。
口調はまるで変わってしまい、先程のような品のある雰囲気はどこにも無くなってしまった。
(まずいっ、禁句だった…?!)
力はそんなに入ってないと思うが、それでも息苦しい。
首という滅多に人に触れられない場所に指があると思うと、恐怖で体が震えた。




