第四夜 天使の裁き 11
髪をかきあげると、またしても柑橘系の香りが漂った。
人を見下す態度を続ける真砂に、野絵は今まで感じたことの無い気持ちを覚える。
「…確かに美しいものに惹かれるのは分かります。私も月が好きだから…」
「そうねー、あなたと月じゃまさしく月とスッポンだけどね」
口元を押さえ、嫌味そうに笑う真砂。
「だけど…」
今までうつむき加減だった野絵は、真っ直ぐ彼女を見据えて口を開く。
「先輩こそ醜いですね。こんな事に魔法を使うなんて…!」
「は…?何ですって?!」
彼女の均等な顔が歪むのをはっきりと見た野絵は、構わず言葉を続ける。
「成城先輩言ってました。魔法は思いの力で出来てるって!なのにこんな事に魔法を使って恥ずかしくないんですか?嫉妬のはけ口に一般人を脅すような事をするなんて、先輩こそ醜いです!!」
途中、声が震えているのが自分でも分かった。
恐怖もあったが怒りの感情が勝っていた為、どうしても反論するのをやめられなかったのだ。
(こんな気持ち初めて…。何かをこんなにも憎らしく思うなんて…)
月好きな事を馬鹿にされた事は多々あったが、イライラしたり、憎らしく思う事はなかった。
趣味は人それぞれだと割り切っていたから。




