第四夜 天使の裁き 10
吐き捨てるように叫ぶ真砂の言葉を野絵は愕然たる思いで聞いていた。
「確かに先輩と比べれば醜いですけど、それだけで人を嫌いになるんですか?!」
「理由なんてそれだけで充分よ」
ゆっくりと近付いてきていた真砂は、野絵の前まで来ると歩みを止めた。
「あなたに一つだけ教えてあげる。アタシの夢はね、美しいものでハーレムを作ることなの。綺麗なものに囲まれて毎日を楽しく過ごすのよ!」
逆光で顔がよく見えないが、彼女はきっと下卑た笑みを浮かべているんだろう。
その証拠に真砂は話すのを一向にやめる気配がない。
「佐山君は合格だったわー。100点満点!可愛いからアタシの弟にしちゃおうかしら?詩歌はもちろんアタシの恋人!これからもずっとずーっと一緒!!」
詩歌の名が出た途端、頬を紅潮させる真砂を見て、野絵はあることを思い出した。
およそ一年前、恋愛関係でゴタゴタしていた親友のあかりが言っていたのだ。
――――…野絵ちゃん、女の嫉妬は怖いから気をつけてね!
その時は全然興味も無かったし、自分には縁遠いものと思っていたので、話半分で聞いていたが、今ならその意味が良く分かる気がした。
(…あかりちゃん、女の嫉妬って本当に怖いんだね)
「だからあなたはいらないの!アタシの前から消えてくれるって約束してくれたら、この鎖を外してあげるわ」




