第四夜 天使の裁き 9
「先輩…っ、何を…?!」
真砂が叫んだと同時に天使の瞳が開く。
ガーネットのような瞳は白目がなく、宝石のように硬い。
綺麗さを通り越して恐ろしさを感じ、野絵は恐怖で体が震え出す。
腕に巻き付いていた鎖が音を立てて動いたかと思った刹那、野絵目掛けてものすごい速さで飛んできた。
当然避けられる訳もなく、あっという間に鎖が体に巻き付いていく。
「きゃああぁっ!!!!」
体中に金属の冷たい感触が走り、身動き出来ない程、負荷がかかる。
「ウフフ、いい光景。どう?これでも怖くない?」
「何でこんなこと…っ?!」
顔を歪め、非難する野絵を満足そうに見つめる真砂。
「体感してもらおうと思ってってさっきも言ったでしょ?もう忘れちゃったの?おバカさんねぇ」
「…っ、先輩は私のこと嫌いなんですか?!」
身体中にのしかかる重さに耐えられず、膝をつく。
その様子を見て、真砂が薄笑いを浮かべゆっくりとこちらへと近づいてくる。
背中に悪寒が走り、汗が体中を伝っていくのが分かったが、不思議な事に野絵は逃げたいとは思わなかった。
「嫌いよ、あなたなんて大っ嫌い!!」
「どうして…?!」
「どうしてですって…?!アタシは醜いモノが大嫌いなの!!近くに寄りたくもないし、触りたくもない。吐き気がするわ」




