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第四夜 天使の裁き 6
砂浜を歩くとサラサラした粒子の中に貝殻が混じっているが、ゴミなどは全く見当たらなかった。
「ここの海岸は凄く綺麗なんですね」
「当たり前よ、毎日掃除してるもの」
眩しそうに海を見つめていた真砂だったが、上機嫌で振り向くと、愛おしそうに砂を掴んだ。
「毎日って、先輩が?!」
「ウフフ、秘密よ」
握っていた力を緩めると、海風に砂粒が飛ばされて行く。
金色の粒子に見とれていると、真砂はまた海の方へと向き直ってしまう。
「そういえば、まだ先輩の名前を聞いてませんでした。教えてもらえませんか?」
「そうね、まだ名乗ってなかったわよね。でもいいのよ。あなたはアタシの名を知らなくて」
背中を向けている為、彼女の表情は分からない。
ただ強い口調には敵意がこもっていることに、この時野絵は初めて気付いた。
「でも…じゃあなんて呼べばいいんです?」
「しつこい子ねー。だから必要ないって言ってるの。今日限りであなたはアタシの前から消え失せるんだから」
「え…?」




