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第四夜 天使の裁き 5
「せ、先輩っ!歩くの早いですっ!!」
「早く行かないと日が暮れちゃうわー!すぐ行きましょ!今、行きましょ!!」
ハンカチ越しとは気が付かない野絵だったが、真砂がものすごい力と速さで押してくるので、さすがに焦る。
(今、詩歌にばれたら全てが水の泡だわ。早くここを出なくっちゃ!!)
(先輩、見かけによらず力強い…。背中痛いなぁ)
駆け足に近い早足であっという間に昇降口を出て、校門まで連れていかれた。
内心、少しおかしいと思った野絵だったが、急遽別の用事が出来たのかもしれないと思い、一人納得する。
(袖ノ月野絵。今日だけじゃなくあなたはずうっと来なくていいの。詩歌には絶対近付かせない!)
背中越しに微笑む真砂は天使などではなく、悪魔のような笑みを浮かべていた。
★ ⭐ ★
校舎から歩くこと約20分。
通学中にいつも横目で見送る海辺に野絵は連れていかれた。
「豊砂海岸っていうのよ。アタシのお気に入りの場所なの」
まだ肌寒い4月の海には人通りは無く、波音と鳥達の鳴き声しか聴こえない。




