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第一夜 満月の出会い 6
「やっぱり病院に…」
「いいよ、ありがとな。じゃあ俺は行くから。それと…」
彼は壊れた望遠鏡に目を配ると、すまなそうに首を垂れた。
「あと20分はここにいろよ?奇跡が起きるから」
「奇跡?」
目をぱちくりさせる野絵に対して、少年は楽しげに笑う。
「そ、お前は奇跡の目撃者になる!…なんてな」
悪戯な笑みを浮かべ、彼は背を向け歩いていこうとする。
「あ、待って!名前…あなたの名前は…?」
慌てて声をかける野絵に少年は諭すように話す。
「またすぐに会えるさ」
月光の元、穏やかに笑う彼は幻想的で、どこか儚げに見える。
野絵が次の言葉を発しようとした時には、もう姿は無く、再び頭上で爆発音が鳴り響き始めていた。
(あの人は…まさか月からの使者…?!)
月好きの彼女が辿り着いた答えは、現実離れしたものだったが、そう思ってしまうのも仕方ない。