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第三夜 天文学部、設立?! 32
「仲間…?違うでしょ」
「は?お前何言って…」
「詩歌はあの子の力が欲しいだけ。待ち望んでいた力だもんね」
肩にかかった長い髪を振り払うと、少女は目の前まで歩いてくる。
いきなりネクタイを掴まれかと思うと、彼女は至近距離まで顔を近づけてきた。
「利用するだけしたら捨てるの?」
「…エンゼル、いい加減にしないと怒るぞ」
鼻と鼻が触れそうな距離。
傍から見たら誤解されそうなシチュエーションの中、二人共口先では笑っていたが、瞳は微笑んではなかった。
「もしあの子が拒んだとしても、それを受け入れたりはしないのよね?」
「それは……」
言葉に詰まる詩歌の表情を、エンゼルと呼ばれた少女は楽しげに見つめている。
「まあ、でもぉ。本人の意思ってヤツは必要よね?嫌々戦わせても可愛そうだもの」
不敵に笑うとエンゼルは一歩後退り、後ろで手を組んだ。
「エンゼル、余計な事はするなよ!」
「余計な事って何よ。先輩として後輩を可愛がるのは当たり前でしょ?詩歌が好きにするんならアタシも好きにするわ」
彼女は身を翻すと、ステップを踏むような軽い足取りで扉へと向かった。




