53/124
第三夜 天文学部、設立?! 31
少し虚ろな瞳をした士音が、部屋の扉を開けるのを見て、野絵もそれに続く。
外に出た途端、夕日が目に飛び込んでくる。
花曇りの今日は雲で光が散乱されていたが、それでも現実味を帯びた赤だった。
「…夢じゃない!」
希望に満ちた野絵の声を、士音は聞き逃さなかった。
★ ⭐ ★ ⭐ ★ ⭐ ★ ⭐ ★ ⭐ ★
先に部室を出て、帰宅しようとしていた詩歌は、バッグを置いてきてしまったことに気付き、教室へ戻る。
扉を開けると、見慣れた女性が机に腰掛け、こちらを見ていた。
「お疲れさま、詩歌」
「よお、エンゼル。無事に終わったぜ」
嫌みがこもった彼女の口調に、詩歌も同じように答える。
「認めないって言ったのに!」
「まあ、そういうなよ。折角出来た仲間だろ?」
彼女が腰掛けている机から自分のバッグを取ると、詩歌は足早にその場を離れようとする。




