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第三夜 天文学部、設立?! 30
「詩歌はどうしてほしいの?」
士音がまたしてもストレートに問う。
「そりゃもちろん二人には仲間に入って欲しいさ。でも強制はしない」
落ちてきたボールをキャッチすると、詩歌は元あった場所にそっとしまった。
ロッカーの腐敗臭が再び漂い、二人は鼻を押さえる。
そんな二人を尻目に、詩歌は散在されている服を掻き分け入り口へ向かう。
「じゃあまた明日、ここで会おう」
満面の笑顔で振り向くと、詩歌は何もなかったかのように去っていった。
部屋に残された二人は、彼が去った後をしばらく呆けながら見ていたが、お互いに顔を見合せ夢うつつなまま口を開く。
「…帰ろうか」
「…う、うん。そうだね、とりあえず帰ろう」
体がフワフワして実感がないのに、心臓の音だけがうるさく響く。
古典的だが、自分の頬を引っ張ってみるとやはり痛かった。
「…夢じゃない」
「あー、そうだね。色んな事聞いてなんか頭が追い付かない」




