第三夜 天文学部、設立?! 27
彼の紡ぐ言葉の一つ一つが、夢のような甘美な響きに聞こえる。
ずっと聞いていたいような、だけどもう現実には戻れないような、不思議な感覚に野絵は困惑していた。
「オレは…使えるなら使いたい」
士音の一言に野絵は大きく体を震わす。
それを見ていた彼は、大丈夫だよとでも言っているかのように優しく微笑む。
詩歌の方へと向き直ると、士音は静かに、でも迷いのない口調で言い切った。
「魔法を使いたい」
「さすがはプリンス君、迷いがないな」
士音の肩を軽く叩くと、詩歌は一瞬柔らかく笑ったが、直ぐに真顔に戻った。
「…ツッキーはどうしたい?」
「わ、私は…もちろんなりたい!魔法使いに!!…だけどそれは何の為に?普通に生活していく上で使えるものなんですか?」
自分で自分の声が少し震えているのがわかった。
さっきは咄嗟な事に有頂天になってしまったが、冷静さを取り戻した野絵はあることを思い出したのだ。
彼と出会ったあの日の事を…。
「野絵…?」
「………こちらはずいぶん察しがいいな」
不敵に笑う詩歌に野絵は冷静に話を続ける。
「私、見ました。…ううん、正しくは見てはないけど。あの日あなたが何かと戦っている音を聞いたんです」
「…ふむ、それでツッキーはどう思った?」
「怖い…というより負けてほしくなかった。だから、だから私は…」
ずっと祈ってました、と言おうとして野絵はその続きを言うのをやめた。




