43/124
第三夜 天文学部、設立?! 21
一瞬辺りが暗闇に包まれた感覚に陥いるが、すぐに元に戻る。
脱ぎ散らかされた服、空いたままのロッカー、詩歌が用意してくれた二人分の椅子。
何も変わらない、だけど何か違和感を覚える。
無機質で冷たい空間の中に放り込まれているような感覚。
「野、野絵!上!」
隣にいた士音がすっとんきょうな声をあげるので、反射的に顔を上げる。
「え、ええっ!?」
一瞬何が起きたのか分からず、何度も瞬きをする。
開いた口が塞がらないというのはまさにこの事だ。
野絵はただポカンとした表情で、宙を見上げていた。
「どうかな?魔法の力は」
詩歌の言葉で二人は我に返る。
「これが…魔法!?」
「あー、すごい!」
二人の視線の先には、宙に浮いたままのスーパーボールがあった。
それは落ちてくる気配もなく、ただそこに止まっている。
試しに近くにあった飲みかけのジュースを持ってみるが、逆さにしても全然こぼれ落ちてこない。
「これが俺の能力、時魔法だ」
「時魔法?」
士音がオウム返しに聞くと、詩歌はにんまり笑い饒舌に言葉を続ける。




