第三夜 天文学部、設立?! 19
野絵も上手い言葉が見つからず、「ダメかも」と呟く。
「あー、魔法使いって何?マジシャンか何か?」
「ノンノン、甘いね王子君。甘いのは顔だけにしてくれよ」
「…」
ハイテンションな詩歌についていけず、士音は口を真一文字に結んでしまう。
野絵も同じくあきれた顔で詩歌を見る。
「二人は魔法とは何だと思う?」
「えっ、えーと…」
「あー、現実にはあり得ない力かな。夢みたいなもの」
急な質問に焦る野絵とは対照的に、士音はすんなりと答えた。
いつも月の事を中心に考えている為、自分が分からないことを質問するのはいいが、こういう予想外のの質問に野絵は弱い。
「ツッキーはどう思う?」
真っ直ぐな瞳に見射られて、野絵はどぎまぎしてしまう。
「そうですね、月には魔力があるとはいいますが…。士音君の言葉に追加するなら、それを可能にする力かなと」
「ふむふむ」
大袈裟に頷くと、詩歌は顎に手をやり、何やら考え込むポーズを取る。
「二人とも実に素晴らしい答えだ。要領を得てるし好感が持てる。だが少し足りないな」
詩歌は再び部屋の奥に戻ると、ロッカーを何やら物色し始めた。
先程とは比べ物にならない位の異臭が漂い、野絵に続き、士音も苦い顔をする。




