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第三夜 天文学部、設立?! 16
真顔で詰め寄る野絵に彼は呆気に取られ、目を丸くする。
少しの沈黙の後、詩歌は「ぶはっ」と吹き出した。
「月からの使者って…、ツッキーどこまで月好きなんだよ」
「い、いいじゃないですか!どうせ月マニアって事も知ってるんでしょう?!」
真っ赤になって反論する野絵に、彼は満足気に笑う。
「まぁ、魔法使いって所は否定しないけどな。俺は…」
詩歌が何かを言いかけた時、勢い良く扉が開く音がした。
二人は一瞬身をすくめ、恐る恐るそちらを見る。
「……士音君!」
先程の彼女が野絵の大声に気付き、駆けつけてきたのではないかと内心ヒヤヒヤしたが、扉の前に立っていたのは少し前まで一緒にいた士音だった。
苦しそうに肩で息をし、額から汗が少し滲み出ている。
「士音君、どうしてここが?」
「………野絵、大丈夫っ?!」
思わず扉へ駆け寄ると、士音に腕を引っ張られ、彼の後ろへと回り込む形となった。
「別に私は大丈夫だよ?」
「さっき、すごい悲鳴が聞こえたから」
「あ…、いや、あれは…」
体重の事を思い出し、しどろもどろになっていると、何を誤解したのか士音は思いきり詩歌を睨み付けた。




