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第三夜 天文学部、設立?! 12
「ふぅ、撒いたか」
静寂を破るように詩歌と呼ばれた少年は溜め息をついた。
「…あの」
「ん?あいつか?大丈夫、ここには入ってこれないから」
「あの…あのあのあの!」
言いたい事が沢山あるのに、上手く言い出せない。
あの日の事は夢では無かった。
ほんとにまた再会出来た。
でも、それと同じ位嬉しかった事が野絵にはあった。
「私の事ツッキーって呼びました?さっきツッキーって!!」
「は?」
「ツッキーって、それ素晴らしいです!!アポロ11号が静かの海に着陸したのと同じ位、素敵過ぎです!!」
子犬のように無邪気な瞳で喜ぶ野絵を見て、詩歌は思わず吹き出してしまう。
「素敵過ぎって…再会出来た事よりツッキーって呼ばれた事の方が嬉しいのかよ、お前」
「はっ、いやいやいや!また会えたのも嬉しいですよ!」
「ついでみたいに言うな」
軽くおでこを小突かれて、野絵は自分の言動を省みる。
せっかく再会出来たのに、オタク丸出しではないか、と。
(再会出来たのも本当に嬉しかったんだけどな…)
「ま、いいや。ようやくお前に会えた」




