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第三夜 天文学部、設立?! 11
両手を振り上げて大声で叫んでいる少女を見て、これはただごとではないな、と野絵は察知する。
足に痛みが走り、息も切れてきて苦しい中、野絵はただ彼の後ろ姿を見ていた。
(良かった、また会えた…)
何故だろうか、胸がじんと熱くなる。
目の前の彼はあの日のように幻ではなく、現実のものなんだと実感すると、とても感慨深いものがあった。
その証拠にさっきから彼が握っている腕の部分が熱を帯びたように熱い。
駐輪場を抜け少し走ると、眼前に白い建物が見えてきた。
個室が何個も連なっていて、どうやら何かの部室みたいな感じだ。
部屋の扉を開けると、彼は中に入るよう促してくる。
入るんですか?と聞きたかったが、詩歌は口元に指をあて、しゃべるなという合図を送ってくる。
仕方なくそのまま中へ入ると、彼も後に続き音を立てないよう、そっと扉を閉めた。
二人して息を殺してその場にしゃがみ込む。
しばらくして慌ただしい足音が聞こえ、何かを物色しているような気配がしたが、少しするとまた足音が遠ざかっていった。




