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第三夜 天文学部、設立?! 10
楽しげに笑うと、彼はいきなり野絵の腕を掴み、自分の元へと引き寄せた。
「…へ?」
突然の事で野絵は目を丸くする。
「悪いが今説明している暇がない。俺と一緒に来てくれ!」
さっきの笑顔はどこへやら、鬼気迫る表情で叫ぶと、野絵の腕にさらに力を込めた。
「え、あの…?!」
「すまんな、そこの男子!ツッキーは貰ってくぞ!」
言い終わるが否や、彼は勢いよく昇降口から飛び出した。
もちろん困惑している野絵を連れて。
同じように驚いた顔をした士音が視界に写るが、それは一瞬の事だった。
外の陽気は春そのもので気持ちがいいが、まだ片足しか靴を履いていなかった野絵は、足に違和感を覚える。
「ちょ、ちょっと、待って?! 靴、靴が…!!」
「悪い!戻るのは無理だ!!」
「なんで…?!」
説明するのが面倒臭いのか余裕がないのか、彼は顎で後ろを見るよう指示してくる。
「…?」
振り返ると少し離れた所に、鬼の形相をした少女が物凄いスピードで走って来るのが見えた。
「待ちなさい、詩歌ー!アタシは許さないわよー!!」




