第三夜 天文学部、設立?! 8
放課後、今日は急ぐ理由も無いので、野絵はゆっくりと帰り支度をしていた。
一人、二人と教室から人がいなくなっていく中、士音の周りだけは祭り事でもあるかのように賑やかで、一向に帰る気配がない。
「士音君、電車通?駅まで一緒に帰らない?」
「春海ってばズルい!私も一緒に帰りたい!!」
「あたしも!あたしも一緒に帰るー!」
テンションの高い女子に囲まれ、士音は困りながらも帰るチャンスを窺っているようだった。
野絵が助け船を出そうか迷っていた時、一人の少女が野絵の後ろから呟いた。
「…馬鹿みたい」
辛辣で冷たい口調だった。
野絵を始め、士音や女子達の動きが止まる。
彼女は歩く速度を緩めず、そのまま教室から出ていってしまう。
ふわり、と花のような残り香だけがその場に漂った。
「な、なにあれー?!ムカつくー!!」
「あいつ、君島いすみとか言ってたっけ?ちょっと可愛いからってカンジ悪いよね!」
「そうそう、昨日もさー…」
女子特有の悪口タイムに入りそうだったので、士音はその隙に音もなく教室から出ていく。
廊下から野絵にこっちに来るよう手招きしているのが見えたので、軽く頷きバッグを手に持つ。




