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第三夜 天文学部、設立?! 7
士音の必死な忠告に野絵は一瞬何か言いたそうに口を開けたが、あきらめて静かに頷いた。
「ねえ、士音君。みんな月には興味ないのかな…」
「あー…、そ、そんなことないと思うよ?きっと他のクラスには入りたいって言ってくれる人がいるよ」
咄嗟にフォローしたものの、野絵はまだうつむいたままで表情が見えない。
(あー、何で上手いこといえないんだオレは…)
自分の不甲斐なさを恥じていると、野絵は急に顔を上げ、満面の笑みで口を開いた。
「そうだよね、こんなにいっぱい生徒がいるんだもん!月好きの一人や二人いるよね?!ありがとう、士音君!」
「あー…」
「よっし、なんか元気出てきたぞー!頑張るぞー!!」
恐ろしく単純な野絵に驚く士音だったが、それ以上に彼女の笑顔が眩しくて、上手く思考回路が回らない。
(あー、まずい。これは……想像以上に可愛い)
真っ赤になって口元を押さえている士音には気づかずに、野絵は一人で盛り上がっている。
(必ず入部希望者をゲットしてみせるぞー!)
(三年間オレの心臓持つかな…)




