第三夜 天文学部、設立?! 2
(き、来たっ!しかも最初が佐山君とは緊張するなぁ)
昨日の入学式の一件で、佐山士音はすっかり人気者になっていた。
休み時間には女子達に囲まれていて、彼の姿が埋もれてしまって見えない状態。
黄色い悲鳴が響く中、隣の席の野絵は、おちおち月の事も考えられず窓際にぼーっと立ち、休み時間が終わるのを待っていた。
男子達には疎まれてしまっているのかもしれないが、真っ先に教室を出て帰った野絵には、その先は知る由もない。
(優しそうな人だったし、大丈夫大丈夫大丈夫…!勇気を出して頑張るんだ!全ては月の為、そう月の為…!!)
「あー、何やってるの?袖ノ月さん」
「はうっ?!」
扉から頭を半分だけ出し、ずっと彼を凝視していたらしい。
傍から見れば少し怖い光景だ。
そんな野絵にも彼は優しく声をかけてくれる。
「何かの遊び?おはよう」
「お、おはよう佐山君!これはえっとその…」
真っ赤になって慌てふためく野絵を見て、士音は穏やかに笑う。
「やっぱり面白い子だね、袖ノ月さんは」
「そ、そうかな?あのね、今日は話があって待ってました」
「…え?」
正しく言えば“皆を”なのだが、士音は自分を待っていたのだと勘違いし、思わず肩からバッグが半分ずり落ちてしまう。




