20/124
第二夜 獅子羽高校入学 13
当然の事ながら、理科室は鍵がかかっていて中には入れない。
「誰かいませんかー?」
中の様子が知りたくて覗きこんでいると、誰かから軽く頭を叩かれた。
「いて」
「いて、じゃない。何やってんだ、お前」
振り向くと、中肉中背で髪をボサボサに生やした男が立っていた。
手には出席簿らしき物を持っているので、どこかのクラスの担任なのだろう。
野絵は気になっていた事を躊躇せず、口にしてみた。
「天文学部の人は開けてくれませんか?」
「は?」
勢いあまって“天文学部の人はいますか?”と“理科室を開けてくれませんか?”という言葉が一緒になってしまう。
時すでに遅し、気恥ずかしくなり、野絵は真っ赤になってうつむく。
「そのリボンの色、お前一年生か?」
「はい」
素直に頷くと、目の前の教師らしい男性は緩く笑った。
「天文学部は今は無いし、理科室は開けられないよ」
「へ…?」
一瞬自分の耳を疑う。
目の前の教師が言ったことが理解出来ず、頭の中で何度も反芻する。
(無い?今無いって言った?!この先生、今無いって言った?!)




