第二夜 獅子羽高校入学 11
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「今年の新入生は中々粒揃いだったわね。特に新入生代表のあの子、佐山君!すっっっごく可愛かった~!!」
「へいへい、分かったよ」
「あらー、詩歌ったら妬いてるの?」
詩歌と呼ばれた少年は、げんなりした表情で渡り廊下を歩いていた。
隣には腕を組みながらさりげなく胸を押し付けてくる美少女がいて、はたから見れば羨ましいことこの上無い状況なのだが、彼の表情は曇っている。
「おい、いい加減離れろよ、エンゼル」
エンゼルと呼ばれた少女は、目を大きく見開き、大袈裟によろめいてみせる。
「ひどおぉい、詩歌。真砂泣いちゃう!」
「そんなたまじゃないだろ、お前は」
「ふふふ、そんな強気でいいの?アタシが泣いたら下僕共が来ちゃうわよ?」
入学式が終わって、周りの同級生達は我先にと暖かい教室へと戻ろうとしている。
いたずらな笑みで詩歌を挑発するのは、エンゼルこと市ノ宮真砂。
スラリと伸びた手足に異常な程小さな顔と頭の持ち主の美少女。
肌は雪のように白く、陶器のように艶やかだ。
折れそうに細い腰に届く深緑色の髪は、シルクのように輝き滑らかで、丹念に手入れされているのが分かる。
彫刻のような完璧な顔には、深紅の瞳が印象的に輝いている。




