第二夜 獅子羽高校入学 9
「次は新入生宣誓です。新入生代表、佐山士音君、宜しくお願いします」
在校生の女子が、良く通る高い声で進行しているのを横目で見ていた野絵だったが、いきなり隣の男子が返事をしたので驚いた。
先程、昇降口で出会った彼は、佐山士音というらしい。
(そういえば、さっき担任の先生が新入生を呼んでた時、佐山とかなんとか…)
月の事を考えていたのでうろ覚えだが、微かに脳裏に残っている。
(新入生代表なんだ…イケメンで頭もいいとは高スペックだなぁ)
ぶしつけながらも士音をまじまじ見ていると、彼と目があった。
柔らかな笑みで、「行ってくるね」と小さく呟いたので野絵も笑顔で頷く。
(それにしても、出席番号まで同じなんてなんたる偶然。私が“そ”で彼は“さ”だもんね)
一人納得していると、士音がポケットから紙を取り出し、スピーチを始め出した。
「暖かい陽光が降り注ぐ春の訪れとともに僕達176名は入学の時を迎えました。本日は僕達新入生のために、このような盛大な入学式を催して頂き、誠にありがとうございます」
今朝の彼とは全く違う意思の強そうな澄んだ声だった。
皆の視線を一斉に浴びながらも全く怯むことのない度胸に野絵は感心する。
(…私には絶対無理だな)




