第二夜 獅子羽高校入学 8
「えー、ですから獅子羽高校は学生の意見を尊重し、自立心を育て、学業や部活動に専念出来るような環境作りに励んでおります」
校長先生の長話というものは、何度も聞いても慣れないものだ。
学生恒例行事とはいえ、この時間は苦痛でならない。
(もっとロマンのある話をすればいいのになー、 例えば月の満ち欠けの神秘とか素晴らしさとか!今日は確か17の月だよね。あの欠け具合がいいんだよね~、あぁ早く見たい見たい見たい…)
素晴らしき妄想タイムに突入すると、野絵は時間を忘れてしまう。
お風呂の中で溺れかけたり、溝の中へ足を突っ込んだり、とにかく危険極まりない。
それなのに本人は全く気にせず、周りの者をヒヤヒヤさせるのだからたちが悪い。
最近一番最悪だったのは、国語のテスト用紙に月のイラストを大きく描いたことだ。
細かく説明を添えて書いたのはいいが、内容と全く関係が無かった為、怒った先生にかなり減点された。
“竹取物語”の問題に興奮して、暴走してしまった結果である。
(早く学校終わらないかな)
入学式初日に不謹慎なことを思っていると、ようやく校長の話が終わったらしく、マイクの音がブツッと切れる音がした。




