第二夜 獅子羽高校入学 6
「あの、キミは…」
さっきまで張り紙を見ていた彼が、こちらを向き何か話しかけてきたが、野絵の思考は止まらない。
(もしかしなくても、これは…)
「あー、キミ…」
「あなた、イケメンってやつですね?!」
初対面にしてはかなり突飛な言動だが、考えていることを口に出してしまう癖がある野絵は全然気にしていなかった。
「あー、えーと…オレはイケメンではないけど、キミは面白い子だね」
柔らかく笑顔を見せる彼に、不覚にもときめいてしまう。
「お、おもしろ…?」
「キミも1-Dなの?さっきから真剣に見てたけど…」
さっきから彼が話す度にバックにバラが見える気がする。
野絵は彼の放つオーラにすっかり気もそぞろになってしまっていた。
(イケメンというものはこれほど破壊力がすごいのか…)
「違ってた?」
「…はっ、いや違くないであります。当たってるであります!」
我に返った野絵は慌てて変な返事をする。
初対面でこんな親しげに話をしてくれる人に対して失礼ではないか。
もっとちゃんとしなくては、と気持ちも新たに背筋を伸ばす。
「オレも1-Dだった、これからよろしく」
「あ、そうなんですか。よろしくおねがいしま…」
すと言いかけて何故だか悪寒を感じ、恐る恐る振り返ると、おびただしい数の視線が野絵に集中していた。




