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第五夜 強襲 38
心臓の音が耳元までうるさく響く。
周りの音が全てかき消され、世界に一人しかいないような感覚に陥いる。
「野絵は下がってて!」
「しょうがない、もう少し頑張りますか!!」
少しよろめきながらも二人共颯爽と立ち上がり、野絵の前に一歩出る。
少し意識が飛んでいた野絵は二人の声で我に返った。
「二人共、これ以上は無理だよ!無茶しないで!!」
「大丈夫、野絵はオレか守るから!!」
「んじゃー、俺はプリンス君を守るってコトで」
真摯な瞳の士音とは対照的に、軽口を叩き、にんまり笑ってみせる詩歌。
そんな二人を見て、野絵は一層焦る。
「私に力があったら二人を守れるのに……!!」
悔しさのあまり体が小刻みに揺れ、思いきり拳を握る。
自分の無力さにうつむいていると、二人はほぼ同時に叫び、敵へと向かっていく。
「負けないっ!!」
「この俺様が負ける訳ないだろっ!!」
果敢にも挑んでいく二人だったが、何分モンスターの数が多すぎる。
教室に収まりきれず、扉から体がはみ出している者や、窓に無理矢理頭を突っ込んでいる者もいた。




