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第五夜 強襲 34
その事に野絵は心底自分の不甲斐なさを恥じた。
黙りこくってしまった野絵を見て、詩歌は少し乱暴に頭を撫でてくる。
「ツッキーは女子なんだから、王子様に守ってもらうのは当然なんだよ。だからそんな顔するな」
「…でも、私足手まといは嫌です!私も皆を守れる力が…、魔法が…」
野絵自身もう覚悟を決めていたはずだったのに、最後の"欲しい"という言葉がのどの奥から出て来ず、愕然とする。
先程の光景がフラッシュバックし、血だらけの生徒達や純子の姿が脳裏をよぎる。
体が小刻みに震え出し、血の気が引いていくのが自分でも分かった。
「本当に欲しいか…?」
少し強めの口調で問われ、野絵は弾かれるように顔を上げる。
真っ直ぐな瞳に見射られ、目を反らすことが出来ない。
視線を外したらそれは、彼や魔法を否定してしまうような気がした。
(どうして成城先輩は私の考えてる事がわかるんだろう)
「ツッキーは後悔しないか?」
いたわるようなでもどこか、突き放すようなそんな言い方だった。
それでも彼の眼差しは、野絵を呪縛から解き放そうとはしない。




