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第五夜 強襲 33
風を感じ窓の方を見ると、一ヶ所だけカーテンが揺れ、こもった空気を浄化してくれていた。
「鍵を開ける位、俺には造作も無い事だからな。それよりプリンス君!魔法が使えたっていうのは本当なのか?」
「あー、うん。なんとか出来たよ」
椅子から立ち上がると、詩歌は士音の肩を掴み、激しく上下に揺すった。
「でかした!やれば出来るじゃないか、プリンス君!!」
「う、うん。ありが…と」
焦点が定まらず、目を回している士音に構うことなく彼は話を続ける。
「やはり俺の目に狂いは無かったんだな!!」
「詩…歌、気持…ち、悪…い」
「あ、悪い。つい興奮して…」
慌てて肩を離すと士音は顔を真っ青にし、だるそうに床の上に横たわった。
「士音君、大丈夫…?!顔色悪いよ?!具合良くないの?」
「初めて魔法を使ったんだ。しかも自己流で。そりゃあ疲れもするさ」
「じゃあやっぱり体力消耗してたんだ…。それなのに私…」
士音は笑って誤魔化していたが、実際はかなり疲れていたに違いない。
しかも自分をおんぶしてここまで運んでくれて、どれ程の労力だったのだろう。




