第五夜 強襲 32
何故だか分からないが、胸が高鳴り締め付けられる。
さっきまで平気だった士音の顔が急に直視できなくなり、思わず目をそらしてしまう。
(な、何で…??)
「野絵…?」
「え、えと。あの…、ま、魔法すごかったね!士音君も成城先輩達と同じ立派な魔法使いになったんだ!」
気恥ずかしさと軽く混乱中の為、野絵はいつもより早口で捲し立てる。
その様子を見て士音は一瞬驚いたが、再びいつもの表情に戻り、柔らかく話し出した。
「あー、うん。無我夢中で気が付いたら出来てたよ」
「無我夢中で…かぁ。星が沢山爆発してて威力も凄かったね!」
「ふむ、そうか。それは俺も是非見てみたかったな」
いきなり背後から声がし、野絵は心臓が口から出てしまうんではないかという位驚く。
ビックリしすぎて、体が椅子から半分ずり落ちてしまった程だ。
体制を直し振り向くと、笑顔の詩歌が椅子にもたれかかり、好奇心旺盛な瞳でこちらを見ていた。
「詩歌!いつのまに…?!」
「ふっふっふっ…。俺様の気配に気付かないとはまだまだだな、お前達」
冗談めいて笑う詩歌に、二人は開いた口が塞がらなくなる。
扉は全て閉めて、中に入って来られないよう鍵もかけたはずだ。




