第五夜 強襲 28
大中小、大きさは様々で皆『瓶詰の天満月、瓶詰の天満月』と呟きながら近付いてくる。
「な…っ?!数が多すぎるっ!!」
「し…士音君、どうしよう…」
背中越しに野絵が震えているのが伝わってくる。
360度辺りを見渡すが、どこもモンスターの群れで覆いつくされ、死角など無いようだった。
『瓶詰の天満月!瓶詰の天満月!』
狂気に満ちた声は一部の狂いもなくハモり、異様な空間を作り出している。
(どうする…?このままじゃ野絵が…!!考えろ、考えるんだ…!!)
ともすれば発狂してしまいそうな状況の中、士音は冷静に考える。
(オレはもう力をもらっている。使おうと思えば使えるはずなんだ!詩歌は…詩歌は何て言っていたっけ?)
――――…呪文は来るべき時が来たら使えるようになってる。
詩歌の言葉を反芻すると、少しだけ落ち着いて呼吸が出来た。
周りの雑音に気を取られないよう、目を閉じ、神経を集中させる。
(オレに…オレに野絵を守る力を………!)
瞳の奥が熱くなり、耳鳴りが響く。
といっても、不快な音ではない。
大地を揺るがすような、深い地響きのような音で、体の中から力がみなぎってくるようなそんな感覚を覚えた。




