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第五夜 強襲 25
「――――っ」
声にならない声をあげ、むせ返る。
手足の先が冷たくなってきて、感覚が無くなり、もう体を動かす事が出来ない。
(誰か…助け……)
「野絵っ!!」
野絵が半ば諦めかけた時、聞き覚えのある声が遠くから聞こえてきた。
もしかしたら近くからなのかもしれないが、半分意識を無くしていた野絵の耳には、やたら遠くに響く。
焦ってるような怒ってるような、この声の持ち主を野絵は知っている。
ピンチになると駆け付けてくれるこの声の主は…。
「すぐに助けるっ!!」
次の瞬間、勢い良く引っ張られ、外気の温度を肌で感じた。
肺に空気が送り込まれ、思いきり咳き込む。
「ごほっ、ごほっ…はぁ、はっ…」
「野絵、大丈夫…?!しっかり!!」
何とか顔を上げると、青い顔をした士音が覗き込むようにこちらを見ていた。
はっきりしない意識の中、助かったという事実だけは分かり、心臓がいつものように動いていることに感謝する。




