第五夜 強襲 24
視界がぼんやりとし、世界が歪む。
(これは現実?夢…?何で…どうしてこんな事に?)
溢れ出る涙を拭おうともせず、立ち尽くしていた時だった。
背後からひんやりとした感触がしたかと思うと、いきなり柔らかいゼリーのような物が、体中にまとわりついてきた。
「…っ?!」
気が付いた時にはもう遅かった。
身辺を見渡すが、一面ゼリー状の小宇宙で、体は重力に反するように浮いている。
(息が…出来ないっ!)
相手を弱らせてから一思いに殺すというのが、このモンスターの常套手段なのだろうか。
恐怖が再び野絵を襲う。
死が自分に近付いている事を、この時身をもって知った。
身体を思いきりばたつかせても、この空間から逃れる事が出来ない。
(苦し…い、私死んじゃうの…?)
薄れゆく意識の中で過去の思い出が走馬灯のように甦る。
幼い頃飼っていた犬と思いきり遊んだ事、科学のテストで120満点取った事。
生まれて初めて自分で望遠鏡を買って、夜が更けるまで月を見た日の事。
そして…この高校に来て皆に出会い、毎日がドキドキワクワクして堪らなく嬉しかった事……。
(嫌だ…、嫌だ嫌だ!!死にたくない!まだやりたいこと沢山あるのに…!!)
何とか呼吸してみようと試みるが、口の中に入ってくるのは空気ではなく、ゼリー状の冷たい塊。




