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第五夜 強襲 19
「どうかしたの?氷川さん」
「袖ノ月さんって苗字長いから、野絵ちゃんって呼んでいい?私のことも純子って呼んでいいからさ」
「!!」
高校に入学してからもう4日目になるのだが、野絵はまだクラスメイトに馴染めていなかった。
士音が度々話しかけてきてはくれるのだが、女子達はもうグループを作ってしまっていて、なかなか輪の中に入れずにいた。
以前きつい一言を浴びせてきた君島も、同様にクラスで浮いていたので声をかけてみたのだが、彼女の反応は薄く会話が続かなかった。
しかも最初の二日間登校したっきり、君島は学校に来ていない。
なので氷川の言葉は嬉しいサプライズであり、野絵にとっては願ったり叶ったりの提案だった。
「う、うん!私も純子ちゃんって呼ぶね!!」
「良かったー!じゃ、またね野絵ちゃん!」
爽やかな笑顔を見せ、去っていく純子を見て、野絵は幸せな気分に浸っていた。
(こんな時に不謹慎かな?でも嬉しい。月曜日もまた声をかけてみよう!)
彼女の姿が見えなくなるまで見送ると、再び向きを変え階段へ向かう。
階段を登ろうと、一歩踏み出そうとしたその時だった……。




