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第五夜 強襲 18
「今もねラケット教室に忘れちゃって取りに来たの。バカだよね~、どうやって部活するんだーってハナシ」
可憐なイメージの彼女だったが、話してみると意外に気さくで、野絵は少し拍子抜けする。
「氷川さん、テニス部に入るって言ってたもんね」
「わ、嬉しい!覚えててくれたんだ!この前はごめんね、天文部断っちゃって…」
「あ、ううん。全然大丈夫だよ。人それぞれ好きな物は違うと思うから」
慌てて頭を振る野絵を見て、彼女はくすりと笑う。
「袖ノ月さんって変わり者なのかと思ってたけど、話してみると案外いい人なんだね」
「ええ?私ってそんなイメージ?!」
「そうだよー、教室で待ち伏せされて、いきなり天文部に入ってくれませんかー?だもん。ビックリしたよ」
彼女の言葉に自分の行動を省みると、何だか恥ずかしくなってくる。
(やややっぱり変だったのかな?唐突すぎた?)
「あ、もう行かなくちゃ。またね、袖ノ月さ…」
「?」
途中まで言いかけて、彼女は口をつぐむ。
何か思案中なのか宙を仰いだまま、動きを止めてしまった。




