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第五夜 強襲 16
「皆、俺の側に来…!!」
悲鳴に近い詩歌の声が途切れ、途端に何も聞こえなくなった。
視界は真っ暗で何も見えない。
不安が募る中、いきなり突風が吹き、髪が乱れたので野絵は目を凝らし、辺りを見回した。
「ここは…昇降口?!」
360度、体を捻って確認してみるが、朝夕いつも利用している昇降口に間違いなかった。
下校している生徒が多いのか、上履きは数える位しか存在しない。
「どうして昇降口に?!みんなは…?!」
何度確認してみても人の気配はない。
薄暗い昇降口は、何だか無機質で不気味に思えた。
(取り敢えず図書室へ戻ろう!誰かいるかも…!!)
不安に駆られ、一歩踏み出す。
何故だかここに来てから落ち着かない。
息をするのも重苦しく、じっとりと汗が張り付く感じがする。
見た目はいつも通りの校舎なのたが、えも言われぬ恐怖に襲われる。
一人でいるのはまずいと直感がそう告げていた。
図書室は本館の三階の一番奥にあり、走っていけば5分もかからず着くだろう。
 




