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第二夜 獅子羽高校入学 3
(…あの後、大丈夫だったのかな?)
三日前のあの日、彼の言う通り20分近く経つと、不思議なことに望遠鏡と双眼鏡が急に光り出し、元に戻ったのだ。
巻き戻しのスローモーションでも見ているかのような光景に、野絵はただ口をあんぐりと開けて見ているしかなかった。
今は部屋の片隅で何事も無かったかのように収まっている。
(やっぱりあの人は月の使者…?魔法が使えるのかな)
あれから何度も彼の事を考えたが、何者なのかさっぱりわからない。
だけど、これから何か大きな事が起きるのではないかと、野絵は淡く期待していた。
大好きな家族や友達、そして月の美しい日々。
野絵の大好きな時間。
望んだ高校への入学も決まり、欲しいものは一通り手にしていると思う。
失ったものもあるけれど…。
まだ15歳の野絵にはそんなに欲も無く、世間も知らない。
そんな野絵が大きな運命の波に翻弄されることになるのだが、今はまだそんなこと露程も知らず、平凡な毎日にただただ満足していた…。




