招集と出会いと役割と
人が増えるー
SIDE イエル
荷物をまとめ終わった私達は今いるこの寮についての情報を交換し合って・・・、と言うのは建前で私が一方的に教えてもらっていた。
「この寮は中央に管理施設と呼べる塔が一本、そしてそれを囲むように10の塔があるんだ」
円形のテーブルの上に部屋の衣装タンスの中に古びた地図を広げながら彼はその綺麗な指で順に指し示していく、それからこの建物のおおよその大きさ、それぞれの部屋の昨日と活用法を予測し合った。
どれ位時が流れたのか、頭を使って疲れた私達はユーリスが入れてくれた紅茶で一息ついていたところに、突然天井から声が降ってきた。
―新入生の諸君入寮おめでとう、俺は寮長のギルバードという者だ。急な話で申し訳ないが寮の顔合わせのために塔一階のエントランスに集まってもらいたい、よろしく頼む―
通信が切れしばしの静寂の後に急な招集に少しの不安とどのような人が居るのだろうと僅かな好奇心を抱きながら私達はエントランスへ足を運んだ。
そこはエントランスと言うには余りに質素な部屋だった、長方形の間取りをしていてその中央に巨大な長方形の形をした装飾が施されてある食卓テーブルが置かれてあり、その上には手が込んでいると伺える料理が乗っていた。奥には調理場と書かれたドアも見えたのでキッチンも有るのだろう。
「まるで食堂ですね」
「そうだね、エントランスと言うよりもそっちの方が的を得ているとボクも思うよ」
「いつになったら改装するんですの?・・・それに食事とは本来1人で優雅に楽しむものですのに」
急に増えた賛同の声に私達が振り返るとそこには私達より少し背の高い女性が立っていた、金髪の髪を左右に束ね活力に満ちた鶯色の目をしており、それを彼女が身に纏っているおとなしい雰囲気を作り出している青いAラインのロングドレスが活動的なその瞳が見事に共存していた。呆けていたのに気づいた私は慌てて挨拶をしようとするとユーリスが前に出てゆっくりと丁寧に礼をし。
「このような所でご高名のストリーヴ家の人間に出会えるとは光栄の極み、私の名はユーリス・ウィズリー、術式は『シングルアクション』魔法は出身が魔法国ですので簡単な物でしたらある程度なら使用できます、以後よろしくお願いします」
彼の礼に満足そうな顔を見せながら
「ようこそ新入生のお二方、私はミラ・U・ストリーヴと申します、ミラでいいですわ。これからよろしくお願いしますわね」
彼女はニッコリ笑いながらそう言って優美な礼を私達に返したのだった。
SIDE ミラ
目の前に居る二人の少女は大変可愛らしかった、1人は赤褐色の紙を腰の当たりで黄色いリボンで結んだ子、もう一人は銀の髪を背中の半ば当たりに下げている子、どちらも魅力的でこういう出会が会ったのならとギルバードの急な招集により私の中にあった怒りが少し成りを潜める。
「私の術式は『観測』これを天文学の魔法によって行使しています、と言っても現段階では余り正確ではないので使いドコロが難しいのですが。」
なにか探しものがあったら私を頼ってくださいね?とにこやかに挨拶すると赤褐色の髪をした女の子が一つ礼をした後に自己紹介を始めた
「挨拶が遅れて申し訳ありません、初めましてストリーヴさん。私の名前はイエル・ファンシンセイルと申します。術式は『憑依』恐らくコレを適正の召喚術の魔法によって召喚された特性を私自身に取り込むことが私の戦い方となるかと思います。恐らくといった理由は私はまだ召喚術の基礎すらも知らない状態でここに居ます、右も左も分からない子供ですが今後共よろしくお願いします」
見た目に反した大人びた挨拶大人びた挨拶だが、それが余りにも不相応なので、背伸びをしているかのように見えて実に微笑ましい。
銀髪の綺麗な女の子はウィズリー家の人間だった、彼処は戦争中に党首が事故死で無くなりそのまま行方を暗ましたと聞いていたのですが。
詳しいことはよく分かりませんが今は私も彼女も一学生、対等の関係を気付いていきたいものですわ、そう思い直し私達3人はワザワザ通信機で呼び出したのにも関わらず未だ姿を表していない愚者の事を思いながら椅子に座ったのであった。
SIDE イエル
「あーすまん、遅れた」
「人を呼び出しておいて待たせるんだなんて良いご身分ですこと」
寮長はそれから5分ほどたった後に姿を表した、カリウスに勝るとも劣らない引き締まった肉体に黒いボサボサ頭とタレ目の中の青い瞳が気だるい雰囲気を醸し出している。彼は部屋の中を一瞥した後に小さく咳払いをした後に自己紹介と寮内の規則について説明を始めた。
「俺の名前はギルバード、とある人間からの依頼でこの寮の寮長をする事になった、趣味は散歩と昼寝、嫌いなものは面倒くさいことだ~よろしく」
あとの説明は少し長くなるから食べ物を食べながら聞いてくれ、そう言って彼の寮内説明+食事が始まった。
「急な話で驚くかもしれないがこの寮は外の時間よりも2倍早いスピードで時が流れている、簡単に言うと10代そこらの若造が3年そこらで直ぐにマギアに対抗できる力を持つことが出来るか?と聞かれたらNOだ。そこで現協会の党首様は『時忘れの術式』という物をこの施設に活用した。ここに来る時に通った階段に変な文様が合っただろう?あれが寮内全体に時忘れの術式を掛けている術式の断片さ、ともあれその『時忘れの術式』のお陰で俺達はマギアに対面する前に十分な力を養うことが出来る時間を持つことが出来るって訳さ」
彼はそこで一旦言葉を区切り手前に合った水を飲み、質問を促したが誰も質問者がしなかった為次の説明に進んだ
「面倒くさい教会の方針のせいで、寮内の生活についてだ洗濯、料理などの家庭的業務を俺達の中で分配しなければならない、この料理は入寮初日の為用意してくれたようだが明日からはそうは行かない、だから各自今から配る紙に希望する家庭業務を記入してくれ、5分後に回収する」
結果は私とユーリスが料理、ギルバードさんが寮長の仕事である倉庫管理と洗濯、ミラさんが図書室の管理と寮内清掃。だがこの結果だとミラさんの仕事が非情に多くなってしまうため寮内清掃は2日に一回該当する寮内全てを4人で分担して清掃する事になった。
「いやーそれにしても今年は料理が出来る奴が入ってきてくれて助かったよ・・・、俺は今年もあの物体Xを食わされるのかと思うと流石に次は命の危険があったからなぁ」
「わ、私だって向き不向きくらいありますわ!」
どうやら去年はミラさんが料理担当だったようだがその絶望的な料理センスのお陰で結局ギルバードさんが何とか料理することによって飢えを凌いでいたそうだ。
「まぁ、今日はゆっくり休んで明日から頑張って働こうぜ?朝食は朝の9時、昼は1時、夜は7時位を目安に作ってたからその時間くらいに作ってもらえたら助かる、後で疑問に思った点がでたら個人で俺の所に来るように」
明日からよろしくなと言う言葉で締めくくり、私達の入寮式はあっさりと幕を下ろした。
読んでくれてありがとうです