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SIN  作者: まかり
8/9

入寮

登場人物追加ー!!

SIDE ???



記憶が混濁している、身動きが取れない、何も聞こえない、何も見えない。

夢も希望も生への渇望も私にはない。

私はこの世に要らぬ者、私は拒絶を主とした者。

ただたまに夢見る幸せそうな彼女の姿を見ると私は胸が苦しくなる、どす黒く汚い人には見せられない何かが私の中から這い上がってくる。


「許せない。」


私はなぜ怒りを覚えているのか、なぜ憎しみを覚えているのか。

この黒に覆われた空間には私に答えてくれる物はいなかった。


「今はまだ動けない、だがいつかは・・。」


彼女の全てを私が奪おう、私はそう空疎な心に誓い再び眠りに落ちていった。



SIDE イエル



私の術式特性は『憑依』生体の身体能力や特性を自分の身に移すことが出来るとのこと、そして魔法の特性は『召喚士』だった。

因みにカリウスの術式特性は『重複』自分自身の身体能力を重複させたり斬撃をの効果を重複させたりすることが出来るらしい。

互いの意志を伝え合った私達はどことなく本当の家族と言うものの雰囲気に近づいたような気がする。

それから私は入寮までひたすら基礎体力の向上に努めた、本来なら召喚士の情報を入寮前に調べて置くべきなのだがこの村には本の貸出を行う機関が無くその事は叶わなかった。


時は流れ、私は今再び共同開発都市パラキアにある基礎教育機関の前に立っている、都市の道路と同じよう煉瓦が敷き詰められた道の上に建っている白を基調とした神秘的な建物からはまだ真新しい雰囲気が立ち込めていた。

周りには同じく入寮生なのだろうか、自分と同じくらいの年代の子供が寮に向けて足を運んでいる、私はその者達に追従するかのように寮に向かって歩き出した。

寮に入ると管理人らしき男性が居たので検査で貰った封筒を手渡す、男性は中身を確認すると物珍しそうにこちらをみて


「召喚士とは珍しいね、彼等は人によって使役の仕方が大きく変わるから学ぶ方も大変だろうが、ここにはそれを調べるすべが有る、後は君のやる気次第さ」


男性はそう言って私の部屋番号が書いてある鍵を手渡しながら


「君の部屋はこの方向の突き当りの右手の階段から3階まで上がったらそこから案内人が君の部屋まで導いてくれるよ」


それでは君に希望に満ちた未来があらん事をと言い残し次の入寮生の対応に回った、それの情景を目の片隅で眺めながら私は男性が指さした方向に向かって歩き出した。

階段は螺旋階段になっており壁には様々な文様が描かれていた、円形の緻密な文様が描かれている物もあれば、線が数本引いてあるだけの物もあり其れ等がどんな意味を持つのか私は現時点で理解出来ないと判断し無心になって先が長そうな階段を歩き続けた。

3階にたどり着くとそこは薄暗く金縁の赤い絨毯と壁に吊るされた点々カンテラにともされた火が有る以外何もなかった。


「案内人なんて居ないじゃないですか」


「失敬なここに居るではないか!」


驚いて嗄れ声のした方向を振り返ると底には、黒い棒に吊るされたカンテラが浮遊して存在していた。


「ゆ、幽霊ですか?」


恐る恐る私が問いかけるとカンテラは心外だと言わんばかりにその身を左右に激しく振り


「私は『ウォーキング・アローン』通称ひとり歩きじゃ、ここで人を適切な人の元へ案内する任を授かっている」


さて君のことを教えてもらうよ、カンテラはそんな事をいいその身をこちらに乗り出して私を覗きこむような体制を取った・・・・すこし熱い。


「なるほど、頑固だが優しさを持ち、他者を受け入れる事に秀でている、深い知性も兼ね備えており、自分の意見をはっきり言える。これならあのひねくれ坊主相手でも大丈夫かのぅ。」


カンテラは嬉しそうにそう嘯きながらこちらにコイと促しながら動き出したので私は慌てて後に続く。


「この寮では部屋は二人一部屋じゃ部屋の数が足りんからな、お前の入寮者は既に部屋に居る、ただかなりのひねくれ者でな見た目も特異なせいか他人を寄せ付けない雰囲気を作っているんじゃよ」


カンテラはそこで言葉を止めてこちらに向き直り


「人は1人では一人前には成れん、誰かと支えあって誰かと通じあって初めて一人前になるのじゃ」


そう言うと再び前を向いて動き出した。


カンテラに案内されて私は部屋に行き着き深呼吸してドアをノックする、すると中からどうぞと声が聞こえたので私は覚悟を決めて部屋の中に入っていた。

部屋の中は廊下のように薄暗くなく薄い肌色の落ち着いた内装をしていて窓から外の光が差し込んでおり窓を開けているのか白地のカーテンが風ではためいた。その窓の近くに設置されたちょうど二人分あるかないかの円形のテーブルに1人の少女が座っていた。

少女は美しかった、艶めく銀の髪が風に煽られて嫋やかに揺れ、整えられた顔の双眸の目は深い青色をしており歳の関係もあってかその美しさの中に可愛らしさ混在している、ただ少女の双眸は僅かだが憂いを帯びていた。

笑ったら綺麗なんだろうなぁ~と私が彼女に見とれていると、


「ボクの名前はユーリス・ウィズリーと申します、こんな成りですがボクは男です、3年間という長い間ですがよろしくお願いします」


中性的な容姿に見合った美しい声で我に返り


「ごめんなさい、ジロジロ見てしまって、私の名前はイエル・ファン・シンセイル。こちらこそ3年間という間ですがよろしくお願いします」


そう言って頭を下げた。



SIDE ユーリス・ウィズリー



部屋に入ってきた子は女の子だった、赤褐色をした緩やかな髪を腰より少し上当たりで大きな黄色いリボンで結んでおり、可愛らしい顔つきに似合わない深い知性を含んでいる黄色い双眸をこちらに向けていた。


少女はボクを見ると何処か羨ましそうなキラキラした目で見つめていたので今のボクの格好を見直す。白いワンピースの上に黒いローブを軽く羽織っているボクの姿は不服ながらとても女の子らしい服装だった。

奇異な目で見られる事を覚悟の上でボクは自己紹介で自らを男だと告げた、にも関わらず彼女はその事には全く振れずに申し訳なさそうにボクをジロジロと見た事を誤りつつ自己紹介をしたのだ。


「気持ち悪くないんですか?」


思わずボクは彼女に声を掛けていた、彼女は少し考えた後に


「あなたがどうして女の子の格好をしてるかは知らない理由はあなたが私に話したくなった時話して、それに私は人の外面だけをみて判断する人間に成りたくない」


彼女は言葉をつなげて


「それにそんなに辛そうな顔をしてたら誰だって何か理由が有るんじゃないかって考えるんじゃない?」


そう言って彼女は優しく笑った。


ボクは彼女の笑顔を見て、少しため息を付いてから彼女の目を見てありがとうとお礼を言ったのだった。



読んでくれてありがとう

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