独りじゃない
今回は何時もと比べて長いです
SIDE イエル
家に帰った私達は大きめの食卓テーブルに向かい合って座っている。
二人の間には検査結果が入っているであろう封筒が置いてあり、私は基礎教育を受ける機関について色々と教えてもらっていた。
教育期間は約3年大体10才から受けることが出来て特に学費等の徴収は行っていないらしい。その代わりに定期的に個人個人の魔法、持っているものは術式の情報を教会に報告するという義務が課せられている。
さらに教育方針として『個人個人が自らの道を自らの力で掴みとる』いわゆる自立というものを根底に据えられた教育のせいかほぼ自学で済ませなければならない、加えて入寮式のこの機関である。
それを調べる為の環境と方法は用意してあるから自分で他者と交流を深め情報を交換し何とかしろ、問事だろう。
ここまで説明した後にカリウスは少しウキウキしてる私を見ながら重たそうに口を開いて
「言いにくいが俺は今イエルを教育機関に向かわせることは反対だ、イエルは問題なく基礎教育過程を卒業出来ると思うよ。でもこの機関の目的の大部分の目的は恐らく先天的な対マギアに対する即戦力の発見だと思うんだよ」
彼はそこで一度言葉を切ると徐ろに立ち上がり部屋の隅のタンスの引き出しの中から写真立てを取り出し私の前に戻ってきた。
「少し長い話になるかもしれないが、聞いてくれないか?」
私は彼の真剣な目を見て首を縦に振った。
SIDE カリウス・ファン・シンセイル
俺には両親というものを間近に触れ合った事がなかった、結婚する前はアツアツだったみたいだが同じ空間で長時間生活する事によって互いの嫌な所が徐々に浮き彫りになっていき俺が14の時に耐え切れずに離婚、今なら珍しいが昔ならよくある話だ。
寂しくなかったといえば嘘になる、親が居なくなった事での喪失感に苦しんだ時期は合った。
しかし何時迄も感傷に浸って入れる訳ではなく当時、義務教育機関なんて物は無かっため俺は死ぬ気で自分の力を実践の場で磨いていった。
だけどそう簡単に上手く世間を知らないガキが生きていけるわけ無くて。
採取依頼や荷物の運搬依頼など色々と底辺の依頼をコツコツとこなしていた俺の功績が認められて、有る日遂に魔物の討伐任務を受理する権利が与えられ意気揚々と俺はその依頼受けたのだった。
初めての魔物の討伐任務で心が浮き立っていた俺はその依頼内容の意味に、他の命を刈り取ることの重みをまるで考えていなかった、だからなのか本来なら複数の人間と組んでやる所を自身の能力を過信して俺は1人依頼を完遂しよう試みたのだろう。
討伐対象の魔物は巨大な怪鳥駆除だった、人の2,3倍の体積を持つ奴らは崖に巣を作り繁殖期になると周りの農村から牛や羊等をさらって仕舞うため、このように定期的に依頼が舞い込んでくるのである、俺は逸る気持ちを抑えながら重量感のある大剣を手に怪鳥に躍りかかった。
結果は早期から術式を発現していた為か何とか依頼内容は完遂することが出来たが、魔物の最後の足掻きで俺は巨大な羽で殴られて俺は崖から突き落とされた。
その後崖から落ちて満身創痍になった俺を介抱してくれたのがこの写真立ての中に写っている人だよと指を指す。そこには藍色の真っ直ぐな髪を腰当たりまで伸ばした緑い色の瞳を煌めかせた快活そうな女性とその腕の中に抱かられた元気が良さそうにこちらに手を振っている小さい女の子の写真が合った。
自衛手段を持っていなかった彼女はその入り組んだ谷の集落で住んでおり自衛手段を持っていなかった彼女はその谷の奥に隠れた集落から出ることが出来なかった。
だから俺は外の世界のいろんな事を依頼の帰りや休日の日に通ってはいろんな食べ物や読み物を彼女に与えて色々なことを話し合った。家に通う日々が始まってから暫くして元から外の世界に興味があった彼女は俺に外の世界を見せて欲しいと言いい俺が了承し、この村に移住したと同時に結婚した。
それから子供も生まれて幸せな家庭を築いていた俺達だが、帝国と魔法国の戦争のため俺は帝国側の徴兵に呼び出されて戦場へ、彼女達俺の事を心配しながらもは今の村を離れて戦火に巻き込まれる可能性が低いと判断された土地に移動を始めた。
それが俺が彼女を見た最後の姿になった。
戦況が好転していきあと少しという所でマギアがこの世に現れそれにより大量の避難民が姿を消した、一般兵だった俺は戦地を離れて妻と子供が居るポイントに向かって全速力で走ったが、俺が付いた時にはそこには村だった物があって、人だったものが有象無象に転がっていた・・・。
全てを失った俺は悲しみに暮れ何度も命を絶とうと考えた、だがその度に、彼女が谷の集落から出る際に言っていた言葉を思い出したのさ
『私は弱い、いつか私はあなたにとって大きな重荷に成ってしまうかも知れません、もしかしたらあなたより早く何らかの形で死んでしまうかもしれません。もしそんな事が合ってもあなたはその辛さを受け止めて、その生命の重みを受け止めてください。その重みを思いに変えて、その辛さを希望に変えて美しく生きてください。私はそんなあなたを愛しています』と。
それから俺はマギア襲来の情報を集めるために今奔走している、彼女の死の真相を突き止める為に、彼女との約束を守るために、彼女が愛した俺で居るために。
SIDE イエル
自身の過去をカリウスの瞳は微かな後悔と同時に気高い精神と強い意志の力を感じさせた。
「だから俺はお前がそういった事が係るところに行ってほしくない。出来れば平穏に幸せに暮らして欲しい。」
そう思っている、彼はそう言って写真立てを優しい瞳で眺めていた。
私は少し考えた後に私は彼にゆっくりと問いかけた。
「私は基礎教育機関に赴きます、私自身の為とあなたと彼女の選択の正当性をあなたに示すために」
こう言うと彼は驚いた表情で私を見て
「俺と彼女の為とはどういうことなのかな?」
と言ってきたので私は彼の目を見ながら自分の意志を告げた
「あなたは恐らく彼女を集落から出した事を後悔したのでは無いでしょうか?あのまま彼処にいたら彼女は無事だったかもしれない、今ももしかしたら生きていたかもしれない。でも彼女にとってはあなたとの日々はとても幸せな物だったのだと思います、この写真を見れば分かります。谷の中で一生を終える人生をあなたはものの見事に変えてた、彼女の世界を広げたんです。」
私は言葉を重ねる
「もしあなたが私に平穏な人生を送ってほしいと言っているのならそれは彼女の幸せを否定することに他ならないんですよ、だから私は教育機関に行きます。行って卒業して、生きて、幸せになって、彼女とあなたの選択が正しかったのだと証明してみせます!!」
お願いします、と私は彼に頭を下げていた。
どれくらいの時が立ったのだろうか私の頭の上に温かい重みが感じられふと顔を上げると、どこか呆れた顔をしたカリウスがそこに居た。
「こんなに体はお子様なのに、なんでそんなに敏いのかな?」
少しおどけた感じで私の頭を撫でながらつぶやく彼に私は言ってあげた。
「子供というものは心に敏感なんですよ?」
クスクス笑いながら私は彼に抱きついて後ろに手を回しながら
「あなたの重みも、あなたの辛さも私が一緒に背負います。私はもう・・」
イエル・ファン・シンセイルなのですから。
読んでくれてありがとう