転移と検査と制約と
続きますー
SIDE イエル
祈りを終え昨日から走りっぱなしだったカリウスと一緒に睡眠を取った後身支度をし、今私達は私の戸籍を登録する為に国民登録所に向かっている筈なのだが私達は門には向かわずに村の中心に足を向けている。
どうやらこの村には転移陣という物が有りマギア襲来などの緊急時用に設置して有るのだが、その利便性と安全性が認められて今では利用理由と個人なら個人の分だけ、団体なら名前をそれぞれ用紙に記入しその代表者が登録証を見せて利用することが出来るそうだ。
残念ながら15歳以下は保護者同任でなければ使用することが出来ないが。
もっと仰々しい物なのかなと思ったのだが装置自体は簡素なもので鳥籠のような外観をしていて床に風をイメージしたような文様が光を明滅していた、恐る恐る触ってみると石のように硬質でひんやり冷い、好奇心でペタペタと触っていると上から
「あんまり慌ただしいと転移失敗で上半身だけ転移・・・・なんてなるかもな?」
なんて恐ろしい言葉を聞かされ思わず身構えてしまった私をカリウスは笑いながら抱き上げて自分の側に下ろして
「安心しろ、上半身だけで転移するなんて事はほぼ皆無だ、ただ他の人が入りにくくなるからその辺にしておけ」
そう言われて周りを見ると、搭乗するであろう人々が微笑ましい顔をこちらに向けてるのが視界に入り思わず顔が熱くなる。
そんな私の様子をみながらカリウスは直ぐ終わるから捕まって目閉じとけと小声で囁いてきたので言われて私は足にしがみついて目をきつく閉じ来るべき衝撃に備えた。
唐突の浮遊感の後自分自身がどこかに引っ張られる感覚を覚えた後体の感覚が一瞬希薄になり足が大地がついた。
恐る恐る目を開けてみるとそこは森に囲まれた村の中ではなく。
煉瓦により整備された道の上を人が賑わいながら通り過ぎる、何処か中世の匂いを残した町に早変わりしていた。
「ここが共同開発都市パラキアだよ、戦争が終わった後に休戦条約を結んだ二国だけど急に仲良くしましょうって言われても無理だよね?だから教会に指揮を取ってもらって二国の利点をいかした中立都市の建設を行ったって事さ」
魔法国の魔法は物を燃やしたり冷やしたりと言った物に転化出来るし、術式はマギアからの自衛手段として用いることが出来る、相互の利点が生かされた画期的な町なのだろう。
それにしても率先的に戦争の事後処理を行っている教会という存在の大きさには目を見張るものがある。
今度カリウスに聞いてみよう、そんな事を考えながら私達は登録所に足を運ぶのだった。
両開きの扉を開けて中に入ると、その中には大きなデスクが壁際に設置されており金色の縁取りをした白いローブを纏い頭にベースが白の緻密な文様が刺繍されている帽子を被った若い女性がデスクの上で何かの文書に羽ペンを走らせていた、こちらが見ているのに気がついたのかその手を止めて椅子から立ち上がりゆっくりと会釈する。
カリウスが簡単に私の経緯を説明すると女性は少し考えた後私の方に向き直り
「じゃあ適正検査は受けてないのね?」
術式適正検査とは何なのだろうか?私の疑問が顔に出ていたのか女性はクスリと笑って
「適正検査と言うのはこの共同開発都市が出来てから行われてるものです。魔法ではどの分野において才能が開花し易いか、また術式では素養が有るか無いかの区分けを幼いころにハッキリさせることによってその人が今後人生の方針を決めやすくするための検査です」
要するに術式が有るか無いか、魔法の適正を調べる検査という事か。
私が受けていませんと言うと女性はデスクの下から薄い橙色の素材が固そうな紙を取り出して。
「ではこちらに名前を記入して血を一滴この紙に垂らしてください」
と言って縫い針ような針と用紙を一緒に渡してきたので名前を記入した後に親指の腹に少し針をさして用紙に押し付け血判が付いてるのを確認してから女性に手渡した。
女性はそれをデスクの奥の扉に運んでいきすぐに戻ってきて
「今解析班に渡しましたのでもう少ししたら結果が分かるかと思いますので、それまで基礎教育過程に入る前にこの地の常識について簡単にお教えしますね。
そう言って女性はデスクの上に大きな地図を広げて説明を始めた。
この地には元々4つの大陸が存在したそれぞれの大陸がそれぞれ特異の文化と絶大な力を持ちそれを誇りとして生きていた。
しかし、自らの文化に誇りを持ちすぎた結果、他国の文化を敵視する余りに四つの大陸は自らの力で他国を自らの文化に染め上げようとし激しい闘争が行われた。
強い力を持ちすぎた人間達が暴れ回った結果大陸が徐々に削り取られ、形を変え、やがてその姿を消していった。
コレを見かねた神は人間達に『スキルリミテーション』を掛けました、これは人がある程度の力しか持つことの出来ないようにするための制約のような物で、コレによって人はある一定以上のエネルギーを持った魔法や物等を作ったり放ったりすることが出来なくなってしまった。
大まかに説明するとこういった事が過去に起こったらしい。
説明が終わった所に白衣を来た男性が入ってきて小さな封筒を女性に渡してまた扉の向こうに帰っていった。
「こちらが検査結果となります、あなたに神の導きがあらんことを」
女性はニッコリと微笑んで封筒を私に手渡し軽くお辞儀をしてまた最初見た時と同じように文書に羽ペンを走らせるのだった。
読んでくれてありがとうですー