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SIN  作者: まかり
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出会いと対話

今後ともよろしくです!

SIDE イエル



かすかな物音に目が覚める、未だ目覚めきっていない頭を擦りながらゆっくりと体を冷たい床から起こす、微かにだが床に踵が当たる音が聞こえてくる。


「無人ではなかったのかな?」


そう呟きながら音がなっているであろう方向に脚を向ける、多少の不安やこちらに危害を加える可能性もかんがみたがそれよりも好奇心がまさっていた。


薄暗くてもこの体は夜目が効くようで昼間のようにとまでは行かないがある程度はっきり物を見ることが出来るようだ、まるで猫だな。

そんな事を考えながら私は足元に気をつけながら歩いていると右手側の奥の部屋のドアの隙間から部屋の光が溢れていた。高鳴る鼓動を抑えながら私はドアの向こうに向かって脚を運んでいき、そっと部屋の中を覗いた。


部屋には男が一人立っていた、身長はだいたい175くらい?だろうか、脚の膝関節部と肘関節部それに利き腕には肩まで金属製の甲冑が装着されている、それら以外は固そうな材質の淡いオレンジ色の服を肌が出ないように着込んでいる頭に防具は存在せず少しくすんだボサボサの金色の髪が自己主張している。後ろ姿しか見えないが部屋の中の書物を漁っているようだ、本を数ページ捲っては「コレではない」「コレでもない」といった具合に本を投げ捨てては新しい本に手を伸ばしている、苦労しているところを見ると探しものを手伝うのも一興かな?と自分の中でそんな考えが首を擡げる。そして、またしても危険性を考慮する前に行動してしまう私なのであった。



SIDE カリウス・ファン・シンセイル



「もし、もしかしてお困りですか?」


急に背後から遠慮がちに声がかかり咄嗟に振り向く、が姿が見えないので周りを見回していると少し不機嫌そうな声で


「小さくてすいませんね、ちゃんと目の前に居ますよ?」


と言ってきたので足元に視線を下ろす、どうやら投げ捨てた本の高さが並々ならる高さになっていたので見えなかったようだ、身長からして10歳くらいだろうか、癖なのか軽くウェーブがかかっている赤褐色の髪を腰辺りまで下げており、顔は少しふっくらとしていて歳相応の幼さが出ているが目つきは何処か大人びていて部分的に見るとそこだけ不自然であるが全体的に見ると幼さと見事に共存している、白い肌と金色の瞳も相まって不思議な雰囲気を醸し出していた。

ふと娘も生きていたらこのくらいの歳だったのだろうか・・・・。そんな思いが頭を掠めて直ぐにその思念を振り払う、そして目の前の子供の情報を得るために口を開いた。


数分後、聞いた内容を整理するとこの子・・・・イエルは信じられない事にこの施設で目を覚ましたらしい、そして目覚めるまでの途中の記憶を全て無くしているのだそうだ、仮説を建てるのならば魔法国側が何らかの人体実験の為に孤児を集めて実験を行っていたが、マギアの襲来により戦争継続が断念されそれに伴い同盟を結ぶ上できな臭い研究を継続をするわけにも行かずに研究を断念、そしてその生き残りが保存時間を過ぎて無事目を覚ました。

見た目や外傷が無かったため実験後というのは考えにくい、どんなに巧妙で凄腕の錬金術士を雇っても外傷なしに行うことは現在の技術でも不可能だ、戦後前だというのなら尚更だ。

加えて覚えていないと言う事によってこの子がえるメリットは殆ど無い。10歳前後の子供で自身のメリット云々を念頭に入れて交渉をする様なこと事は無いだろう、記憶があったらあったらで魔法国側との交渉が出来る様になるのかもしれないが、その為にはこの子の身柄を魔法国に預けなければ成らない。

それは物凄く気が引けた、今10歳前後ということは恐らく拉致されたのはもっと小さい頃となるのだろう、この子はその間ずっとこの閉鎖された空間の中で暮らしてきたのだ。友達も作らずに、親に甘えることもなく、ただひたすら耐え続けてきたのかと思うと、俺はこの子を魔法国に渡すことなど考えられなくなった。

もしかしたら俺は、あの時の過ちをやり直したいだけなのかもしれない、大切なモノを失ったあの時の娘の姿とこの子の姿を重ねていたのかもしれない。


「良かったら俺と一緒に、暮らさないか?」


今度こそ必ず守ってみせる・・・・。何をしても。

俺は心に誓った。



SIDE イエル



急に暮らさないか?と聞かれてびっくりしてしまったが、そのセリフを言った彼の表情を見てると何かに迫られたような、どこか緊迫感の有る思いつめた顔をしていた。

だから私は笑ってこう言った。


「そんなにつらそうな顔をしていると、此方まで辛くなっちゃいますよ?」


そう言うと彼は鳩が豆鉄砲を食らったような顔になった後にバツの悪そうな笑みを浮かべた、私はその表情を見て続けてこう言った。


「私の事をどう思っているのかも分かりませんし、どうしたいのかも私には分かりません。ですが私はあなたと一緒に外の世界に触れてみたい、学んでみたい、そう思っています。」


そうして私は今後とも宜しくお願いしますと頭を深く下げたのであった。




読んでいただきありがとうです!!

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