目覚め
やっと異世界です
SIDE イエル
長い夢を見ていた気がする、だが夢の内容は忘れてしまった。
私には記憶というものが欠落している、しかし都合が良い事に物の使い方それがどう言った物かを理解しており使うことが出来る、簡単に言えば私が今書いている文字を私は読めるし内容も理解できるが、それをいつ習ったのかさっぱり思い出せないと言った感じだ。書き慣れてない羽ペンであるのでサラサラとはいかないが3日目の日記を書き綴る、少し回想をしてみよう。
初日、私が目覚めたのはベットの上でも布団の中でも無く温い湯の様なもので満たされた巨大な試験官の中にその身を収めていた。
目覚めて身動ぎをするとポンと高い機械音が鳴り「保存中ノ生物反応ヲ確認、保存ヲ中断シマス」と水中の中に居るせいか、くぐもったアナウンスが流れ温水が徐々に水かさを減らしてゆき、有りがちな空気が抜けるような音を出して私は外気に触れた。
余談ではあるが『イエル』と言う名は私が保存されていた試験管の固定具のネームプレートの破損が酷く『i○○○○er』と書いてあったため読める部分だけを読んで作った物だ、粗末な名前ではあるが無いよりもあった方いいだろう。
話を戻して、晴れて試験官から出た私は人気の研究所を探検するのであった。
そして現在、ホコリが溜まったデスクの上を掃除して机の上に放置してあった白紙に日記を綴るに至る。探検の結果食料庫と衣服は確保することが出来た、この小さな体は食べ物を余り摂取シなくてもいい為食料の問題は取り敢えず置いておいていいだろう、明日はもう少し遠くを調べてみたい。
そんな事を考えながら見つけた大きめの白衣を着込んで床に横になるのであった。
SIDE カリウス・ファン・シンセイル
数年前この世界で大きな争いがあった、色々な意味で利便性に秘めた魔法を宣伝し他国を侵略しようとした魔法国ボルネアと古より伝わる才能の色が濃くでる戦闘に秀でた術式帝国アルデバロン、当時アルデバロン側は術式至上主義、術式とは才能の有無で行使できる度合いが決まる。
術式の才があれば身体機能を増幅させ、馬よりも早く走ることも出来るし、体を硬質化させ剣を生身で受けれるなど人間場馴れした動きができる。逆に才のない場合は生まれた時から不良品のレッテルが貼られ義務教育期間が終わったらそれより高度な教育を受ける事が出来ず、限られた職種から職業を選びホソボソと暮らしていかなくてはならない。
そんな中、魔法という物は術式の才のない者でも扱えるという優れものだった、しかし、術式至上主義で今まで国を取り仕切ってきた皇帝は魔法という新たな力に些かの恐怖を覚えこちらの国に完全に浸透仕切る前に魔法国を滅ぼす事を選択した。
戦闘経験が豊富で実際に戦うことに特化された術式を用いる兵隊と出来たてホヤホヤの魔法軍、魔法の利便性はあくまでも誰でも使えることであって戦う事に慣れていない軍隊には術式兵は荷が重く、戦況は徐々に帝国有利となっていった。
しかし、戦乱の最中突如空から大きな石が降ってきてからこの世界は大きく変わった。石が降ってきてから2年が過ぎ戦争もほぼ決まりかけてきた頃に奴ら、『マギア』は現れた。
彼等は圧倒的殲滅力、圧倒的な数により魔法国帝国の人間問わずに食い荒らしていった、この現状を見かねた両国の王は一時休戦としマギアの殲滅に乗り出した。それに伴い現状を宗教の力で民を安心させるために中立の教会を設置し民へのつかの間の安寧を与えた。
だが俺は不思議でしょうがなかった。あの石が降ってきた後明らかに魔法国側の動きはおかしかった、まるで足止めを目的をしてるような布陣、幻術による兵隊のフェイク・・・、何よりも異常だったのは魔法国側の兵隊が急激に好戦的になり自爆による巻沿いをするようになった事、自身命を惜しまずにその身を戦場に散らしていく様はまるで地獄絵図のよう光景だった。
時は過ぎ、現在では皇帝が交代し両国の交流が盛んに行われるようになった。魔法国は魔法の利便性の頭角を早くも発揮し今では一つの成熟した国と成っている、両国の仲が良好になってくれたお陰で帝国の才能のない者が魔法国に行き魔法を学ぶことが出来、魔法国で術式の才能のある者は術式帝国に赴き術式を学ぶことが出来るようになった。
だがそもそもあのマギアは何処から出てきたのか、何のために出てきたのか
それが気になって仕方ない、あの戦況での登場は余りにも狙いすぎている、魔法国側からしてみればタイミングが良すぎる。
そして現在、俺はその事を調べるために今戦時中使っていて破棄された巨大な研究所の中に居る、人気のない薄暗い廊下を靴が床を踏む音が響き渡る。
「絶対に何かある・・・・。」
そう自分に言い聞かせながら、俺は暗闇に歩みを進めるのであった。
次の話から話が少しずつ動いていきます。