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お花屋さんの美美

お花屋さんの美美は…


チューリップの丘

「お母さん!お母さん!お母さん!」

「何なの!うるさい!」

姉妹が母を呼んだ。姉の「るり」は白とブルーのストライプのワンピースを着ていた。黒い髪は肩まであって、くるっと外に向いていた。「お母さん、ちょっと派手かしら?」母の「浅岡みみ」は、忙しくお弁当を作っている。「これと、これと、えーっとこれと・・・」昨日から母はお弁当を準備していた。朝作ったのは梅と昆布と鮭のおにぎりと卵の伊達巻を作った。「あとはほうじ茶ね!」

「ねぇお母さん、ちょっとこっち向いてよ!」今度は妹の「りり」が叫んでる。白いジーンズにブルーのスタンドカラーのシャツ、黒い髪は腰までのストレート。

「いわれ〜くふたりともブルーが合うわね」

「あなたたち、四年ぶりにお父さんに会うのだからしっかりね!」

「わかっているわよ、だいじょうぶ!」姉妹は叫んだ。

「ねぇお母さん、お母さん!お母さんは何を着ていくの?」そして、三人で母の着ていくものを選び始めた。

「やっぱりお母さんはまだ若いから、白のワンピースいいわ。髪はポニーテールして」

「白なんて派手じゃない?」「いいの、いいの、これで!」姉妹はそろって言った。

父と母は十七歳の時に「るり」が生まれた。ふたりは高校生だった。学校では有名な夫婦になった。高校を卒業して一緒に暮らすことになり、子供を二人で育てていくようになる。この事について親たちは全く反対しなかった。

「いいじゃないの、好きで一緒になったんだから」母方の親は言った。父方の親も「いいじゃないの?好きで子供ができたんだし」同じような答えだった。全く同じ答えだったので、かえって父と母はびっくりしていたらしい。十八歳の時同じ屋根の下で暮らし始めた。父と母が、二十歳の時妹の「りり」が生まれた。

父は花問屋の仕事をしている。この仕事は「浅岡義」(あさおかよし)にとって大正の時代から受け継がれ義は、十八歳で九代目となった。花問屋の朝は忙しい。朝の三時には義は起きている。「ぎーちゃん、もう三時?」(母は義のことをぎーと呼ぶ)

「ああ」義はパソコンの前に座った。暗い部屋でパソコンの明かりだけが眩しい。義は朝の競り市のデータを観ている。どの花がいくらで競りに出されるか、チェックしているのだ。義は、急いでそのデータをメモした。母は朝ご飯の準備をしていた。ご飯とみそ汁と目玉焼きが朝食の定番であった。母は急いで鮭のおにぎりをふたつ作った。後はあったかいほうじ茶。これが義のお昼の弁当である。

「みー、出かけるぞ」(義はみみのことをみーと呼ぶ)「わかった」子供たちはまだ寝ている。二階の部屋から一階に降りてきた。一階は花屋である。みみは花屋として働いている。これが浅岡家の仕事であった。みみが一階のシャッターを開ける頃はもう四時十五分であった。義は軽トラに乗って出ていった。クルマで十五分、市場に着く。みみはひとりで花屋を切り盛りしている。毎日忙しい、花屋の休みはなかった。義は市場に着くと、花の値段のチェックをしている、時々データと同じではない時がある。花は季節に合わせて色とりどりでとても花は美しい。問屋は花を競り落とすと花を買ってくれる花屋に売る。こんな生活が十二年続いた。たくさんの花屋があるが年々少なくなっているのが現状であった。

みみは、花屋の「美々」として働いていた。子供たちをひとりで働きながら育てた。義の仕事が忙しいのは分かっていたが、たまには仕事を休んで家族でどこか温泉にとかに出かけたかった。

義は悩んでいた。もっと花の美しさを知ってほしい。りりが、高校三年生の時、父はフランスのパリに行ってしまった。義は今の花屋としての社会に溶け込めない、花が消えていく。義は危機感を感じていたのだ。今後時代に合った花を売る、花の美しさに感動してほしい。花屋として生きていくためには本場の花売りを観たかった。パリに住んで花の美しさを学んで日本での花を表現したかった。そして義はパリに行ってしまったのだ。

現在、姉のるりは、みみの花屋を手伝っていた。もう二十二歳。高校を出て花のマイスターになるために花の美しさを学んでいた。みみは寂しかった、とても寂しかった。みみは、この四年間ひとりで頑張った。花屋としての在り方、売り方、問屋のこと、軽トラの運転などすべて義から教えてもらっていたのだ。子供たちは美しくそして心の優しい女性になっていた。義とは四年間あっていない。そして今日パリから帰ってくる。みみはドキドキが数日前から治まらない。こどもたちに会わせるのも心配だったし、ひとりで花屋の「美々」をやってきたことへの不安もあった。

「ぎーちゃん、私頑張ってきたのよ、ぎーちゃん会いたかった」

「ぎーちゃん、寂しかった」

小さな公園。公園の入り口から駐車場に着いた。四人は軽トラから降りた。荷台から弁当を持った。公園にはいい匂いがしていた。

「チューリップ、チューリップの匂いだ!」義は叫んだ。

公園の小さな丘にはチューリップでいっぱいだった。四人はその丘にチューリップのいい匂いを嗅ぎながら登った。登りつくと小さなベンチとテーブルがあった、丘の上からはチューリップの花たち全体が見えた。

「お母さん、お弁当を食べましょ」みみは弁当をテーブルの上に広げた。

「いい匂いだ、とてもいい匂いだ」義はよっくりと言った。

「ほんといい匂いだわ」

ぎーとみーとるりとりりは、深く息を吸った。

「いい匂い」みんなで言った。

そして笑った。

※最初のほうの「いわれ〜くふたりともブルーが合うわね」だけは、写真そのものがこのように見えるので、そのまま起こしてあるよ。ここは元の文章を確認したほうがよさそう。


みーとぎーとるりとりりの物語

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