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花様年華

掲載日:2026/03/19

墨の匂いを嗅ぐと、あの三年間を思い出す。

静かな教室。

朝の光が差し込む窓辺。まだ誰もいない時間に、ひとり筆を握っていた自分。あの頃の僕は、何者でもなかった。特別な才能があるわけでもなく、胸を張れる過去があるわけでもない。ただ、ひとつだけ強く思っていた。


変わりたい。


高校の入学式の日、新品の制服の袖を少しだけ握りしめながら、僕は心の中でそう呟いた。大きな決意じゃない。誰かを見返したいわけでもない。

ただ昨日までの自分より、少しだけ前に進みたかった。

その気持ちは、やがて一人の“光”に出会う。

勉強もできて、運動もできて、人に優しくて、笑顔がまぶしい人。彼女は何も知らない。

自分が誰かの背中を押していることなんて。


それでも確かに、僕は救われていた。

好きになったことが、僕を強くした。

届かないかもしれない想いが、僕を前に進ませた。

書道と出会ったのも、その頃だった。

最初は、ただの選択授業。なんとなく持った筆が、

いつの間にか、僕の人生を映す鏡になっていた。

墨は正直だ。迷いも、焦りも、未熟さも、すべて線に出る。だからこそ、逃げられない。

何度も書き直し、何度も破り、それでもまた、筆を取る。

その繰り返しが、少しずつ、僕を変えていった。

あの三年間は、ただの高校生活じゃない。

笑った日も、悔しくて眠れなかった夜も、眩しすぎて目を逸らした瞬間も。

すべてが、僕の“花様年華”だった。

そして今、あの頃を振り返りながら思う。

青春は、終わるものじゃない。形を変えて、続いていくものだ。

あの三年間を、僕は墨で綴った。

でも物語は、まだ途中だ。

花様年華――その先へ。


四月の空気は、まだ少し冷たかった。

でも、胸の奥だけは妙に熱を帯びていた。

新品の制服は、どこか身体に馴染まなくて、歩くたびに自分が“新入生”だと主張してくる。校門をくぐる前、僕は一度だけ深呼吸をした。


ここから、変わろう。


大きな夢があったわけじゃない。誰かに勝ちたいわけでも、目立ちたいわけでもなかった。

ただ、これまでの自分のままでいるのが、どうしようもなく嫌だった。

過去の失敗も、不用意に放った言葉も、後になって胸を締めつけてくる後悔も、全部抱えたまま、僕はここに立っていた。

入学式の体育館は、人の熱とざわめきで満ちていた。知らない顔ばかり。それなのに、どこかで

「やり直せるかもしれない」という期待があった。

席に座り、前を向く。

校長の話は正直ほとんど覚えていない。

でも、ひとつだけ、心に引っかかった言葉があった。

「高校生活は、自分次第です」

その言葉は、僕に向けられたものだと勝手に思った。

その日から、僕は小さなことを始めた。

授業が終わるたび、教壇の前に立ち、まだ残っている板書をそっと消す。

白いチョークの粉が舞い、黒板に残った文字が、ゆっくりと消えていく。

誰かに頼まれたわけじゃない。先生に褒められたこともない。クラスメイトに気づかれることさえ、ほとんどなかった。

でも、黒板がきれいになる瞬間を見るたびに、少しだけ胸が整う気がした。

まずは、できることから。

商業高校の授業は、想像以上に実践的だった。簿記、検定、専門科目。正直、簡単ではなかったけれど、机に向かう時間は嫌いじゃなかった。

努力は、裏切らない。少なくとも、そう信じていた。

夏が近づく頃、人生で初めてのアルバイトも経験した。親の会社での清掃作業。楽な仕事じゃなかったけれど、父から教わったマナーや言葉は、今でも胸に残っている。

働くということ。誰かの場所を守るということ。

それを知れた夏だった。

部活には、まだ入っていなかった。放課後は家でゴロゴロする日も多かったし、

「これでいいのかな」と思う夜もあった。

それでも、心のどこかで、何かが始まる予感はしていた。


二学期が始まると、

学校の空気は一気に動き出した。

体育祭の準備。グラウンドに引かれる白線。

スピーカーから流れる、少し古い音楽。

掛け声と笑い声が、校舎の外まで溢れていた。

僕はその喧騒の中にいながら、どこか一歩引いた場所にいた。

みんなと同じ場所にいるのに、同じ熱量になりきれない。そんな感覚が、まだ残っていた。

ある日の練習中、ふと視線を上げた先に、テントが見えた。

グラウンドの端。直射日光を避けるために張られた、簡易的な白いテント。

その下に、ひとり、座っている人がいた。

足を怪我して、練習には参加できないらしい。

周りには誰もいない。ただ、競技を眺めているだけ。

それだけの光景なのに、なぜか、目が離せなかった。

あ、見たことある人だ。

廊下ですれ違ったことがある。移動教室の途中で、

名前も知らないまま、なんとなく記憶に残っていた人。

でもその時、初めて「存在」として、はっきりと認識した。

風が吹いて、テントの布が小さく揺れた。

その瞬間、彼女がふっと顔を上げて、グラウンドの方を見た。それだけだった。

目が合ったわけでもない。会話があったわけでもない。ただ、同じ空間にいただけ。

なのに、胸の奥が、わずかにざわついた。

なんだろう。

理由は分からなかった。ただ、「気になる」という感情だけが、静かに、確かに、そこにあった。

練習が終わっても、その姿が頭から離れなかった。

夜、家に帰っても、ふとした瞬間に思い出す。

テントの下の、少し遠くて、でも不思議と近く感じた人。それが、恋だと呼べるほどのものだったのかは、まだ分からない。

でも、あの瞬間から、僕の世界は、ほんの少しだけ色を変えた。

この出会いが、後になって、何度も僕を救うことになるなんて、この時の僕は、まだ知らなかった。

それからというもの、日常は何も変わっていないはずなのに、僕の見ている景色だけが、少しずつ違って見えるようになった。

廊下を歩く時、無意識に視線が遠くを探している。

移動教室の途中、人混みの中に、あの人の姿を重ねてしまう。

見つかるわけがないと分かっているのに、それでも、探してしまう。

こんなこと、今までなかった。

授業中、ノートを取りながらも、ふと、意識が逸れる。

チョークの音。窓の外の風。そして、テントの下にいた、あの横顔。自分でも戸惑った。

どうして、こんなにも心が引っかかるのか。

誰かを好きになるって、もっと分かりやすいものだと思っていた。胸が高鳴って、世界が輝いて見えて、すぐに答えが出るものだと。

でも、これは違った。

静かで、じわじわと広がって、気づけば日常の隙間に入り込んでいる。

そして同時に、小さな不安も生まれた。

どうしたらいいんだろう。話したこともない。

名前すら知らない。同じクラスでもない。

近づく理由も、きっかけも、何ひとつ持っていなかった。

何もしなければ、何も起きない。

でも、何かしようとすると、その先が怖くなる。

もし、迷惑だったら。もし、変に思われたら。

せっかく始まった高校生活を、また間違えたらどうしよう。過去の自分が、ふと頭をよぎる。

言わなくていいことを言って、傷つけて、

後になって後悔した日々。

同じことを、繰り返したくない。

だから、僕は立ち止まった。何も行動しない、という選択。それは、臆病さだったのかもしれない。

それでも、その気持ちを否定することはできなかった。

放課後、黒板の前に立ち、板書を消しながら、ふと考える。文字が消えていくたびに、答えも一緒に消えていくような気がした。

正解なんて、分からない。でも、この気持ちから、

目を逸らすこともできなかった。

そんなある日、小さな“つながり”が、思いがけない形で生まれる。

それが、次の一歩になることを、この時の僕は、

まだ知らなかった。画面の向こうの距離

徐々に彼女の名前、クラスの情報が耳に入るようになった。それはそうだ、彼女は学校の中でも有名だった。成績優秀、部活は運動部でかなり強い、そして人柄もよく、美人だ。そんな彼女に憧れを持っている人は、僕だけではないだろう。

ある日、思い切って、彼女の名前を検索した。

インスタグラム。

指先が、少しだけ震えた。フォローする、という行為が、思った以上に重く感じた。

でも、このまま何もしないまま、気持ちが薄れていくのも、それはそれで怖かった。

少しだけ、近づいてみよう。

フォローは、すぐに返ってきた。それだけで、胸の奥が、小さく跳ねた。

最初のやり取りは、本当にたわいのないものだった。

好きな食べ物。休日は何をしているか。趣味の話。

特別な言葉なんて、何ひとつない。でも、通知が鳴るたびに、世界が少し明るくなる気がした。

文章を打っては消し、送っては、返事を待つ。

既読がつくたびに、少し安心して、返事が遅れると、理由もなく不安になる。そんな自分に、何度も苦笑した。

こんなに、振り回されるものなんだ。


体育祭が終わったあとの九月。

あの慌ただしかった日々が嘘みたいに、学校は少し落ち着きを取り戻していた。彼女とDMで話すことが多くなった。一日の終わりに彼女とのやりとりがあるだけで、明日も頑張ろうと思えた。

誰かを想う気持ちは、人を前に進ませる。

そんなことを、そのときの僕はまだ言葉にできなかったけど、確かに感じていた。

九月の終わり頃。

書道の授業中に、先生に声をかけられた。

書道部の顧問の先生だった。年齢は六十歳くらい。

いつも穏やかな笑顔で、話し方もゆっくりで、でも芯のある、やさしい先生。

「書道、興味ない?」

押しつけるでもなく、誘うというより、そっと差し出すような言葉だった。

正直、迷った。書道は嫌いじゃないけど、特別好きというわけでもない。そして昔から文字をきれいに書くのは苦手だった。だから書道は未経験だった。

でも、その瞬間、ふと彼女のことが頭をよぎった。

彼女は部活を頑張っていた。放課後、仲間と過ごす時間を大切にしていた。それが、まぶしかった。僕も、何か頑張ってみようかな。DMで感じていた、

あの前向きな気持ちが、静かに背中を押した。

「やってみます」

そう答えた自分に、少し驚いたのを覚えている。

書道室に入った瞬間、墨の匂いが広がった。

不思議と、落ち着く匂いだった。

先生は言った。

「上手じゃなくていいのよ。

ちゃんと向き合えば、それでいい」

その言葉が、胸にすっと入ってきた。

筆を持つ。紙に向かう。

線は歪んで、思ったようには書けない。

でも、先生は笑って言った。

「大丈夫、大丈夫」

その一言で、肩の力が抜けた。

最初は、彼女に少しでも近づきたくて。

同じように、何かを頑張っている自分になりたくて。

そんな不純とも言える理由だった。

でも、白い紙と向き合う時間は、いつの間にか

自分の心を整える時間になっていった。

恋の余韻を抱えたまま、墨に触れた九月。

このときはまだ知らなかった。

この出会いが、三年間の青春をまるごと形づくることになるなんて。


書道部に入った頃の僕は、

正直に言えば――未経験者だった。小中学校の授業で触った程度。「字がきれい」と言われたことも、

特別誇れる実績も、何ひとつない。それでも、筆を持つ時間は不思議と嫌じゃなかった。

むしろ、白い紙に向かっていると、頭の中が静かになっていく。

顧問の先生は、焦らせることをしなかった。

「まずはね、墨に慣れましょう」

そう言って、結果よりも“向き合う姿勢”を大切にてくれた。先輩たちは、一つ上の学年の女子が四人。

みんな優しくて、でも、頼りがいがあった。線がうまく引けないとき、

「大丈夫だよ」「最初はみんなそう」

そう言って、自然に隣に来てくれる。

上手くいったときは、自分のことみたいに喜んでくれた。

未経験の僕を、「初心者」じゃなく、「一人の部員」として扱ってくれた。それが、何より嬉しかった。二学期が進むにつれて、書道に向かう時間は増えていった。

放課後、墨をすって、紙を広げて、ひたすら書く。

上手くいかない日もあった。むしろ、そっちの方が多かった。

思うように線が伸びない。気持ちが散っていると、字も落ち着かない。そんなとき、先生が静かに言った。

「書道はね、書く人の気持ちが、そのまま字に出るの」

筆を持つ手が、一瞬止まった。

「それだけじゃないよ」

先生は続けた。

「今まで努力してきたこと、積み重ねてきた時間も、ちゃんと字に現れる」

その言葉は、胸の奥に、深く沈んだ。

ああ、だからか。

上手く書けない日は、心が揺れている日だった。

逆に、集中できた日は、線が不思議と素直に伸びた。書道は、嘘がつけない。だからこそ、向き合いたくなった。彼女のことを考える日も、自分に自信が持てない日も、全部そのまま、紙に置いていく。

書くたびに、少しずつ、自分が整っていく気がした。

そうして迎えた、二学期の終わり。クラスマッチの時期だった。

当日、学校で彼女の姿を見かけなかった。

少し、胸がざわついた。夜、何気なくDMを開く。

「今日、来てなかったけど大丈夫?」

少しして、返信が来た。体調を崩していたこと。

喉が痛くて、しんどいこと。画面を見つめながら、

僕は考えた。

何か、できることはないかな。

大したことじゃない。でも、思いついた。

「はちみつレモン、よかったら飲んでみて。

喉にもいいし、体もあったまるよ」

送信ボタンを押すまで、少しだけ迷った。

重くないかな。出しゃばってないかな。でも、力になりたかった。それだけだった。

「ありがとう」

その一言が返ってきたとき、胸の奥が、じんわりとあたたかくなった。書道で学んだことが、少しだけ、ここにもつながった気がした。相手を想う気持ちは、行動ににじみ出る。筆先だけじゃない。言葉にも、態度にも。

墨の匂いに包まれながら過ごした二学期は、僕にそれを、静かに教えてくれていた。


学校とはまったく関係のない場所だった。放課後でもなく、休日の特別な予定でもない。

ただ、いつも通りに立ち寄ったスーパー。買い物かごを持って、通路を歩きながら、買い物メモを見ていた。そのときだった。

不意に、聞き覚えのある声がした。

自分の名前。

一瞬、聞き間違いかと思った。

でも、もう一度、同じ声がした。振り返ると、そこに彼女がいた。

制服でもなく、学校で見る姿とも違う、少しだけ大人びた私服。

、、あ。

声にならない声が、喉の奥で止まった。学校の中では、すれ違っても、目が合うだけで精一杯だった。

なのに。ここでは、彼女のほうから、まっすぐに声をかけてくれた。

「こんにちは」

たったそれだけの挨拶が、どうしてこんなに、

胸に残るんだろう。学校の外で、クラスでも部活でもない場所で、“知っている人”として、認識された気がした。

話した内容は、本当に短い。

偶然会ったね、今日は何を買いに来たの、そんな、どうでもいい会話。でも、そのどうでもよさが、やけに嬉しかった。特別じゃない。けれど、確かに、距離が一段近づいた感覚があった。

別れ際、軽く手を振って、それぞれの売り場へ戻った。

背中を向けたあと、自分の心臓が、やけにうるさいことに気づいた。

ああ。

僕はもう、ただの「同級生」じゃ、いられなくなってる。そう思った。

その日の夜、インスタのDMを開いた。

けれど今日は、ほんの少しだけ、意味が違った。

学校の中だけじゃない。クラスの枠でもない。

「偶然会った人」じゃなく、

“日常の中にいる人”になれた気がしたから。

しばらくして、通知が鳴る。

「今日びっくりしたね笑」

その一文だけで、胸の奥があたたかくなる。自分も返す。

「まさかスーパーで会うとは思わなかった」

文字はいつも通りなのに、どこか距離が近い。

「私あそこよく行くんだよね」

「そうなんだ、僕もたまに行く」

そんな何気ない会話。でもその裏で、心は静かにざわついていた。また会えるかもしれない。

偶然を、少しだけ期待してしまう自分がいた。

やり取りは、以前よりも少し長く続いた。

スタンプの使い方が、少し砕けた気がした。「笑」の回数が増えた気がした。それだけで、世界が明るくなる。

返信が遅れると、やっぱり不安になるけれど、今日はどこか、余裕があった。だって、現実でちゃんと会ったから。画面の向こうだけじゃないと、知っているから。

恋は、劇的な告白から始まるんじゃない。こういう、偶然と認識の積み重ねで、静かに、深く、染み込んでいくものなんだ。

スーパーで名前を呼ばれたあの日から、DMは、ただの文字のやり取りじゃなくなった。

それは、現実とつながった言葉だった。


二学期の後半。

書道部で過ごす時間は、いつの間にか生活の一部になっていた。

放課後、墨をする音。紙に筆を置く前の、あの一瞬の静けさ。未経験だったはずの僕は、気づけば「どう書けばよくなるか」を考えるようになっていた。

うまく書けた日も、納得できない日もある。

でも、不思議と投げ出したいとは思わなかった。

それはたぶん、書道が“結果”じゃなく、

“向き合い方”を教えてくれる場所だったからだ。

そんな日々の中で、季節は静かに冬へと進み、

街は少しずつ、色づいていった。


クリスマスが近づいていた。

その日も、特別な予感なんてなかった。

いつものようにスマホを見て、何気なくDMを開いた。そこに、見慣れない文面があった。

告白だった。頭が、一瞬、真っ白になった。驚いた。正直に言えば、かなり。

これまで、ちょくちょく話すことはあったけれど、

そんな気持ちを向けられているとは思っていなかった。嬉しくなかったわけじゃない。

誰かが、自分をそうやって想ってくれるという事実は、胸の奥を、確かにあたたかくした。

でも同時に、心はすぐに、別の場所へ向かっていた。

思い浮かんだのは、たった一人。

体育祭の日に、テントの下で見かけたあの姿。

DMで、何気ない話を重ねて、一喜一憂していた日々。書道をがんばろうと思った理由。

全部、彼女につながっていた。

迷いは、なかった。だから、丁寧に、正直に、断った。相手を傷つけたくなかったし、

自分の気持ちをごまかしたくもなかった。

送信したあと、しばらくスマホを置いて、天井を見つめた。少しだけ、胸が痛んだ。

それでも、後悔はなかった。

誰かを想う気持ちは、同時に二つ、持てるものじゃない。

そして僕は、自分が思っていた以上に、一途だった。

その夜、筆を取った。

墨の色は、いつもより濃く見えた。揺れなかったわけじゃない。でも、消えなかった。心の中の灯りは、ちゃんと、ひとつの方向を照らしていた。

―二年生になる前の、この冬。

僕はまだ、未完成で、不器用で、迷いながらも。

それでも、自分がどこを見ているのかだけは、はっきりと分かっていた。

三学期に入ると、

時間の流れが少しだけ変わった気がした。

行事は少なく、教室も、どこか落ち着いていて、

冬の空気がそのまま学校の中に入り込んできたようだった。

その分、自分と向き合う時間が増えた。

書道部の活動も、ただ「参加している」だけのものではなくなっていた。未経験で入った自分は、正直、最初の頃はついていくのに必死だった。

先輩たちの筆運びは迷いがなく、線はまっすぐで、

余白の使い方さえ美しかった。比べてしまうと、自分の字は幼くて、どこか落ち着きがなくて、気持ちばかりが先走っているように見えた。それでも。

女性の書道の先生は、いつも明るく、そして驚くほど丁寧に、僕の字と向き合ってくれた。うまく書こうとするよりも、逃げずに向き合うこと。

結果を急ぐより、今日の一枚を大事にすること。先輩たちも優しかった。

先輩たちが励ましてくれたり、アドバイスをくれたり、そんな小さなことでも少しずつ自分に自信を育ててくれた。

三学期の終わりが近づく頃、ふと気づいた。

書道が、“がんばっていること”から、“手放したくないもの”に変わっていた。

放課後、筆を持つ時間が、落ち着くようになっていた。書く前に深呼吸する癖がついて、一画一画に、

ちゃんと理由を持たせようとしている自分がいた。

そして同時に、二年生になるという現実が、少しずつ近づいてきた。先輩になる。後輩が入ってくる。

今まで守られてきた立場から、支える側に変わる。

不安もあった。自分に、そんなことができるのか、と。でも、逃げたいとは思わなかった。むしろやってみたい、と思っていた。

変わりたいと願っていた自分は、もう、動き始めていたから。

三学期は、派手な出来事はなかった。

でも墨が、少しずつ、覚悟の色を帯びはじめていた。

二年生へ。

その一歩手前で、僕は、筆を握る理由を、ちゃんと自分の中に持ち始めていた。


二年生になって最初の夏。

書道部では、初めての大会に向けて、作品作りが本格化していた。部室の窓から入る夏の光が、紙や墨を照らし、汗と墨の匂いが混ざった独特の空気の中で、僕は筆を握った。

未経験の自分にとっては、すべてが挑戦だった。

それでも、先輩たちの的確なアドバイスと、後輩たちの真剣な眼差しに触れるたび、少しずつ自分の線に自信が持てるようになっていった。

「書道はね、書く人の気持ちが字に出るのよ」

先生のその言葉を思い出し、一画一画に心を込める。

でも、夏休みは部活だけではなかった。友達と街へ出かける時間が、僕にとっての小さな冒険になった。

ある日は電車に乗って隣町へ。友達の家で、何時間も桃鉄をして遊んだり、、ただしょうもないことで大笑いしたり。無邪気に走り回るだけで、汗が混ざる夏の空気も楽しく感じられた。

夏休みに入る前、期末テスト前には、ガストで勉強会も開いた。メンバーの中では、僕が一番頭がよかったから、みんなに教える立場になった。

も、みんながいい点数を取れたときの笑顔を見ると、教えてよかったと思えた。勉強だけでなく、互いに励まし合う時間も宝物だった。

そして、友達のおすすめで学割ラーメン屋に行ったこともあった。濃厚で香ばしいスープともちもちの麺。あの味は今でも忘れられず、また食べたいと思うほどだった。

もちろん、海へも出かけた。砂浜で走り回り、木の棒で侍ごっこをしたり、無邪気に笑い合ったり。

波の音と笑い声が、夏の記憶に刻まれていった。

そして、彼女とのやり取りも変わらず続いた。ドラマや好きな俳優の話で盛り上がる日もあった。

「この回、めっちゃ面白くなかった?」

「わかる!私もあそこ笑った!」

偶然、同じ俳優が好きだったことが分かると、

心が跳ねるように嬉しかった。共通点を見つけた瞬間、小さな喜びが胸にじんわり広がった。

部活の熱、友達との笑い、そして彼女とのやり取り。三つの光が、夏の時間を彩った。

そして、初めての大会に向けて、墨をすり、筆を握る手に、少しずつ迷いのない力が宿っていった。

夏の暑さとともに、僕の心も、熱く、そして確かに、前へ進んでいた。

初めての大会

夏の暑さが残るある日、僕は初めての揮毫大会に臨んだ。部室で何度も練習してきたけれど、やはり本番となると緊張が押し寄せる。これまで積み重ねてきた努力が、うまく作品に表せるだろうか、不安で胸がいっぱいになった。

でも、周りを見渡すと、優しい先輩たちの落ち着いた表情や、一生懸命に筆を握る後輩たちの姿があった。そして、先生の穏やかで力強い励ましも。

「書道は心の現れ。あなたの気持ちを信じなさい」

その言葉を胸に、深呼吸をして筆を持った。

心の片隅には、彼女のこともあった。彼女もまた、部活で努力していると知っていた。頑張る姿を思い浮かべると、自然と力が湧いてきた。

筆を動かすたび、夏の光と墨の香りが僕の背中を押してくれるようだった。

そして、結果は、秀作賞。

初めて大きな大会で、自分の努力が認められた。

胸に込み上げる嬉しさと感動に、思わず涙がにじんだ。これまで支えてくれた先輩たち、後輩たち、先生、そして彼女に、心の中で感謝を伝えた。

初めての挑戦は、僕に自信と、さらに進む勇気をくれた瞬間だった。


修学旅行、冬の長野と東京

二年生の冬、待ちに待った修学旅行がやってきた。

行き先は長野と東京。長野に到着すると、目の前には一面の雪景色。光を受けてキラキラと輝く雪、真っ白な世界に思わず息をのむ。

まぶしい冬の光が、心まで透き通るようだった。

スキーや雪遊びを楽しみながら、友達との時間を思い切り味わった。雪を蹴りながら笑い合う声、転んで雪まみれになった瞬間も、すべてが鮮やかに心に刻まれる。

そして、雪の中で見た彼女もまた、冬の光に照らされて眩しかった。白い雪景色に映える彼女の姿は、

まるで光そのもののようで、自然と胸が高鳴った。

「まぶしすぎて、目が…見えないかも」

心の中でそうつぶやき、思わず見とれてしまった。

夜にはみんなで食事を囲み、学校では見られない先生たちや友達の一面に笑いが絶えなかった。

東京では、ディズニーシーやお台場観光を楽しみ、

冬のイルミネーションや海風、アトラクションの歓声に包まれながら、友達と馬鹿をやったり、腹を割って話したり。


三学期、進路を決める時期がやってきた。

そんな中、待ちに待った職場体験が訪れる。行き先は地元の図書館。普段とは違う静かな空間で、本の整理や貸出の手伝いをする三日間。でも、ただ仕事をするだけでは終わらなかった。なぜなら、偶然にも彼女と二人きりになったのだ。

「一学年の中から、なんで僕と彼女が二人きりになるんだ…?これで人生の運、全部使い切ったんじゃないか?」

そんなことを考えながら、心臓がバクバクして手が震えるのを感じた。

仕事中も、どうしても視線は彼女に向いてしまう。

本を棚に戻すたび、貸出を手伝うたび、彼女の動きが気になってしまう。その存在感は、図書館の静かな空間の中でひときわ輝いていた。

そしてお昼の時間、向かい合って座る僕は、緊張でまともに前を向けず、箸の持ち方もぎこちない。

そんな様子を見た彼女が、少し心配そうに声をかけてくれた。

「大丈夫?緊張してるみたいだね」

その言葉を聞いた瞬間、胸の奥がじんわり温かくなるのを感じた。嬉しい。

でも、心の中ではすぐにツッコミを入れた。

「緊張してるのは君のせいなんだけどな…!」

思わず心の中でにやりとしてしまう。

彼女の優しさが、緊張の嵐の中で小さな光となって僕を照らしてくれた瞬間だった。世界が少し特別に感じられた。

三日間の職場体験は、仕事をこなす緊張感と、

彼女と過ごす胸キュンのドキドキで、心が忙しく揺れ動いた。仕事の充実感ももちろんあったけれど、

僕にとって何よりも鮮やかで忘れられないのは、

彼女と二人で過ごせた奇跡の時間だった。

職場体験を終えて学校に戻ると、二月の風が少しだけ冷たく感じられた。その日は、毎年恒例のバレンタインデー。

「まあ、友達くらいしかチョコは来ないだろうな…」

そんな気持ちで教室に入った僕を待っていたのは、予想以上のサプライズだった。

部活での努力や、検定に向けて頑張ってきた姿を見てくれたのか、思いがけず多くの人からチョコをもらったのだ。一つひとつ手渡されるたびに、嬉しさと少しの照れくささが入り混じる。

「僕…こんなにもらっちゃっていいのかな?」

心の中で静かに笑いながら、でも胸は少し高鳴っていた。

そして、その中には――本命チョコがあった。告白してくれたのは、一つ年下の後輩の女の子。部活仲間ではなく、偶然インスタでつながっていた子だ。

どうやら、僕が彼女を想うように後輩の子も僕の頑張っている姿を見て、尊敬してくれていたらしい。

その瞬間、心の中で小さな波が立った。嬉しい気持ちと同時に、彼女への想いがぶわっと蘇る。迷いながらも、僕は自分の気持ちに正直でありたいと思った。

「ありがとう、でも…ごめん。僕はずっと彼女のことが好きなんだ。」

丁寧に断る言葉を伝えると、後輩の子は少し寂しそうだったけれど、柔らかく微笑んでくれた。その瞬間、胸の奥で温かいものが流れ込む。自分の気持ちを大切にすること、誠実であること――それを選ぶことが、大人への一歩でもあるのだと、心の中で噛み締めた。

こうして、二年生の冬は、進路への挑戦と職場体験、そしてバレンタインの甘酸っぱいドキドキで彩られた。心が揺れ動いたこの瞬間は、これからの自分の青春の中で、ずっと光り続けるだろう。


三年生になってからの毎日は、忙しくも充実していた。面接対策、勉強、部活、やることは山積みで、夏休みも遊ぶ暇はほとんどなかった。むしろ、その時間をすべて作品作りに注ぎ込むことにした。

朝から晩まで筆を握り、作品に向き合う日々。汗も、悩みも、全部が自分を成長させる糧になった。


二学期に入ると、文化祭の準備が少しずつ始まる前に、思いがけない出来事があった。二つ下の女の子から告白されたのだ。心の中は驚きでいっぱいになったけれど、答えははっきりしていた。

「ごめんね、、、僕には、、、」

そういって僕は、また光に向かって歩き出した。

断ることは少し切なかったけれど、同時に嬉しさもあった。自分のことを見てくれる人がいる。その事実は、これまでの自分に自信をくれるものだった。

告白してくれた全ての人に、心の中で感謝した。

「僕を見てくれて、ありがとう」


そして、地元で大きなお祭りが開かれた。

花火が夜空を彩る中、友達と一緒に街を歩く。

笑いながら出店を回り、屋台の食べ物を分け合い、夏とは違った特別な時間を楽しんだ。いつの間にか友達とはぐれてしまった。

そのとき、目の前に現れたのは、浴衣姿の彼女だ。

胸が高鳴り、言葉が出なかった。でも勇気を振り絞って声をかけた。

「こ、こんにちは。」

彼女もこちらに気づいて優しく微笑む。

「こんにちは、僕くん。学校ぶりだね。」

「う、うん笑、学校ぶり、、1人?」

「いやね、友達とはぐれちゃってさ。もしかして僕くんも迷子?」

「勝手に迷子にしないでよ、笑。いつの間にか友達がいなくなってたんだよね。」

「迷子じゃん笑」

彼女の微笑む姿に見惚れてしまった。

「見すぎだよ?」

「え、あ、えご、ごめん。」

つい目が離せなかったのだ。


ヒュードン、パラパラ


僕たちをそっちのけで、花火が上がった。

「あー花火始まっちゃった。もうさせっかくだし一緒見よ?」

そういって彼女に連れられて見晴らしのいい公園に着く。

「もうすぐで高校生活終わっちゃうねー。」

「うん、あっという間だったね。」

そうだ、あともう少しでこの高校生活も幕を閉じる。それまでに彼女に想いを伝えたい。

「僕くんはさ、高校終わるまでにやっておきたいこととかあるの?」

「いきなりだね、笑。書道の最後の公募展で金賞を取ること、かな。君は?」

「おぉ、さすがだね。私はね、たくさん思い出を残すことかな。」

「いいね。」

僕も彼女のその思い出に残るのだろうか。

「この瞬間も大切な思い出になると思う。」

彼女がそう言うと、少しの沈黙が続いた。

「僕もこの瞬間、大切な思い出になるかな。」

彼女の方をむくと彼女の頬は赤く染っていた。

それは花火の光なのか、それとも、、

この時間が花火と共に、徐々に静かに終わった。


やがて文化祭の季節がやってきた。三年生は、クラスごとに動画制作か舞台発表を行う。僕はクラスの動画制作を担当。撮影から編集まで、夜遅くまで作業を続けた。

夜中ギリギリまで粘った編集作業の結果、完成した作品は、自分でも納得できる出来だった。努力が形になり、仲間たちと一緒に成し遂げた喜びが、心に深く刻まれた瞬間だった。


文化祭当日、校内は活気と緊張に包まれていた。

三年間の思いを込めたこの瞬間、書道部のパフォーマンスは、僕にとってただの発表ではなかった。

心の中にはただ一つの願いがあった。

「彼女に、僕の思いを届けたい。いや、見てもらいたい。」

文化祭では、書道部のパフォーマンスがオープニングを飾ることになっていた。どんなパフォーマンスにするか、何度も悩み、試行錯誤を重ねた。

その年の文化祭のテーマは「青春」。だから僕は、がんばって考えたというより、自然に「自分にとっての青春」を表現したくなった。

僕にとっての青春、それは、彼女が光だったということ。その想いを意識して、パフォーマンスの構成や文字に込める言葉を決めた。

舞台に立ち、筆を握る瞬間、胸は高鳴りっぱなしだった。一画一画、僕の思いを込めて文字を書き上げる。描いた文字はこうだ。


君の笑顔に救われて

君の言葉で変われたんだ

光に出会えたから、

今の僕ができたんだ。

花様年華


後輩たちもこの言葉を見て「これでいい!」と笑顔で協力してくれた。練習や準備を共にしてくれた仲間たちの支えがあったから、ここまで来られたのだ。終わった後、しっかりと感謝の言葉を伝えた。

舞台が終わり、墨の匂いと歓声の中で深く息を吐く。達成感と甘く切ない余韻が混ざり、心はいっぱいだった。そして何より、彼女の表情が気になって仕方がなかった。見てくれているか、僕の思いが届いているか――胸は高鳴り続けた。

「僕の青春は、この一瞬にある」

そう確信しながら、僕は深く礼をして舞台を後にした。三年間の努力、仲間との絆、そして彼女への純粋な思い、すべてがこの文化祭の一瞬に凝縮されていた。


文化祭が終わり、校内に少し落ち着きが戻った頃、僕は次なる目標に向かって動き出した。

行きたい専門学校への夢も決まり、あとは最後の作品、自分のすべてを注ぎ込む書道作品作りに集中する日々だった。朝は始発で学校に向かい、書道部の教室で朝練。先生も後輩たちも「朝練で作品作り?!」と驚いたけれど、僕はもう止まらなかった。昼休みも、放課後も、手を止めることなく筆を握り続けた。自分でも「ここまでイカれてるのか」と思うくらい、狂ったように練習した。

毎日、紙に向かうたびに自分の心と向き合い、字に気持ちを込めた。墨の香りが鼻をくすぐる中で、緊張と期待、悔しさと喜びが混ざり合う日々。

何度も書き直し、手も肩も痛くなったけれど、心は充実していた。

そして迎えた二学期末の作品発表。

僕の目標は「乾墨金賞」。

これまでの努力を形にし、全てをぶつける瞬間。胸が張り裂けそうだった。

結果発表 僕の名前は、乾墨銀賞に呼ばれた。

金賞には届かなかったけれど、悔しさと同時に、大きな達成感が胸に広がった。高校から書道を始めた僕にとって、この銀賞は十分すぎる成果だった。

「ここまでやれた自分、すごいじゃないか」

そう心の中で自分を褒めた。

もちろん、この結果のきっかけは彼女でもある。

彼女の存在が僕に「もっと頑張りたい」という力を与えてくれた。だけど今回の成果は、僕自身が行動して、努力して、手に入れたもの。きっかけは彼女でも、結果は僕のおかげ。そんな微妙な感覚に、少し笑いながら胸が熱くなる。

努力の汗と墨、仲間たちの支え、そして大切な人への想い、全てが混ざり合ったこの銀賞は、僕にとって青春の証であり、自分の成長を感じる瞬間だった。


三年間の高校生活も、ついに終わりを迎えようとしていた。

やり残したこと、思い残したこと、嬉しかったことも悔しかったことも、すべてが胸に込み上げてくる。

卒業式を前に、教室で流す動画の編集も僕が担当した。過去の行事や友達との笑顔、努力してきた日々の映像をまとめる作業は、懐かしくて、楽しくて、少し切なかった。

「この三年間、僕は本当に頑張ったな」と実感しながら、完成した動画を見て微笑んだ。

そして卒業式当日。

長い三年間が、一つの節目を迎える。

式典の緊張と喜び、友達や先生の笑顔、周りの拍手――全てが胸に刻まれた。

思い返すと、笑えることも、悩んだことも、努力しても理解できなくて苦悩したこともあった。

好きな子に上手く振り向いてもらえなかった悔しさや、涙がこぼれそうな辛い日もあった。

でも、そんな日々のひとつひとつが、今の自分を作ってくれた。振り返れば、どれも大切な経験で、感謝の気持ちでいっぱいになる。

卒業式の後、僕はどこかに向かっていた。

「今、時間いい?」

「うん、もちろん。」

全てを知っているような、見透かしているような、そしてどこか優しい目で僕を見ていた。

「3年間、君と出会えて、君と関われて、楽しかった。君に救われた。僕は君のことを尊敬してる。そして僕は君のことが好きだ。だから3年間ありがとう。」

僕は、緊張で変な言葉になったことを自覚していた。それでも僕は良かった。彼女に想いを伝えることができたから。

「ありがとう、、私も僕くんと出会えて、関わることができて楽しかったよ。3年間ありがとね。私も、、」

悔しさも甘酸っぱさも、青春の証。


「本当に、いい三年間だった」

そう心の中でつぶやきながら、僕は深く息を吸って校門を後にした。

努力と友情、恋や挑戦――すべてが墨に刻まれた、僕の青春。

花様年華――美しく咲いた、三年間の奇跡がここにあった。

ここまで読んで頂きありがとうございます。作者の実体験も交えつつ、青春小説を自分なりに書いてみました。良かったらコメント等で感想なで頂けると助かります。そして好評でしたら、これを長編に書き直そうと思っていますのでよろしくお願いします

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何者でもなかった少年が抱く「自分を変えたい」という切実な想い。 派手な成功物語ではなく、誰もいない教室で黒板を消したり、慣れない筆を握ったりする小さな一歩を積み重ねる描写がとても現実的に感じました。ま…
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