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ありがとう、そして、さようなら

 カイルの家の扉をノックした。

 カイルのお父さんが出てきて、私をカイルの部屋に案内してくれた。


 昨日とあまり変わってないが、呼吸の回数が減り、私は涙が出そうとなった。


「カイルさん、今、助けます」


 私は丸椅子に座って手を組む。

 手に魔力を集中させて。

 ぶわっと風が吹き上がり、そこらにあった本や紙が宙に舞う。

 淡い光も出てきて、光の蝶も出てきた。

 家のあちこちが停電して、全ての力をカイルに使う。


 耳鳴りが鳴っても、あちこちが痛くなっても感覚がなくなっても、祈るのをやめない。


…お願い、起きて。元気なあなたを見たの。


 頬に涙が伝っても関係無い。

 カイルのために祈りを注ぐ。


「くっ…」


 魔力が少なくなってきて、体が重くなっていく。

 服で隠れていた羽も段々と消えていくのが感覚でわかる。

 羽は精霊にとっては生命。

 

…痛い…痛い!!


 焼けるようなもぎ取られているような痛みが背中に走る。

 咳をすれば、赤い血が口から出てきた。


『痛いでしょ?苦しいでしょ?そんな人間に命をかける理由があるの?』


『みんなのところに行きたいでしょ?人間はみーんな敵。そんな人間捨てちゃえば?』


 ザワザワと精霊の声が聞こえる。

 甘い誘惑に一瞬、気を取られそうになった。

 だが、もしやめてしまえば、セレナ様に叱られてしまう。


『中途半端は嫌いです』


 セレナ様の口癖だったな。


 私は覚悟を決め、魔法を編み込む。


…あなたはもっと痛く辛かったのに…。


 パッと部屋全体が光に包まれる。



 急に眩しくなり、カイルは薄目を開ける。

 そこには、リリシアが居てたが、段々と薄くなっていく。

 体が重くて手も伸ばせない。


…リリー!!やめて、消えないで!!


 ぽつり、ぽつりと涙が頬に伝わる。

 

 カイルが起きていることに気づいた、リリシアはいつものように無邪気な笑顔を向ける。


…お願い、消えないで!


 リリシアは口パクで『愛している』と言い、僕のことを優しく抱きしめた。


 リリシアは完全に消えてしまって、カイルは生まれて初めて、大泣きをした。

 悲しくて、寂しくて、リリシアが居なくなった虚無感が襲ってくる。

 カイルは大泣きをして、疲れたのか眠ってしまった。

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