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青年の切なさ

 リリシアが帰っていった後。

 部屋の中にはカイルとエリオットのみとなった。


「なぁ、リリシアって本当に精霊なのか?」


 エリオットに聞かれ、考えてみる。


 美しい銀色の髪に気弱そうなエメラルドのような緑色の瞳。

 尖っている耳は長く、十二歳もあるか、ないかの小柄な少女。


 御伽話の中では精霊は絶対的に人間の前に出ない。

 理由は諸説あるが、人間が何かをやらかしたのは間違ってなかったらしい。


「どうだろうね」


 肩を竦めながら、カイルはそう言った。


「でも、姿は御伽話に出てくる精霊と似ているが…」


 手を顎に置いて、考えてみると。


「まぁ、今は危害を加えなさそうだから、警戒だけしとこう」


…確かにそうかも。


 僕のせいでもあるし、彼女の瞳は心配の色味しか見えなかった。


…けど、無性に彼女を見ていると、胸が高鳴るかも?


「どうした?」


 胸に手を押さえていたらしく、ハッと我に返り、首を横に振る。


「何でもない、その方がいいね」


 お互い顔を見合わせ、頷いた。



 あの日から、リリシアは毎日来るようになった。


 尖っていた耳は幻影魔法で人と同じ耳となっていた。

 だが、耳に触れると、人の耳ではなく、尖っている耳の感覚がして不思議な感じだ。


 ふと、顔を見上げると、父さんや母さん、エリオットのお父さんとお母さんに囲まれたリリシアが居た。

 父さんや母さん、おじさん、おばさんは薬草を育てているので、その手伝いをしているようだ。

 

 カイルの視線にリリシアは気づいたようで、手を振った。

 カイルもふっと微笑んで、手を振り返した。


 そしたら、リリシアの頬は少し赤くなっていた。

 カイルもにやけているよに口元が緩んだ。

 微笑ましそうに見ている、両親とエリオットの両親に見られ、リリシアはあわあわとしていた。


 カイルは軽い笑いをしながら、頬杖をついた。


…リリーの出会いからもう、二ヶ月が経つんだね。


「僕も手伝いたいな」


 そう、呟くと隣にいたエリオットが苦笑いしながら、答えた。


「無理だよ」


 エリオットはリリシアとカイルが思いやっているのを知っている。


…いや、雰囲気で皆分かるか。


 最近ではカイルとリリシアに恋愛相談をされるので、「焦ったい」と呟いているのを聞いたと、母さんに聞いた。


 リリシアが笑うたびに、この幸せな時間が永遠に続けばいいと願ってしまう。

 でも、次の瞬間には、肺を握りつぶされるような痛みが襲い、現実に引き戻される。

 ゴホゴホっと、咳を出した。


「大丈夫か!?」


 隣にいたエリオットに背中を摩られ、心配そうに声をかけられる。


「うん、ありがとう」


 手の平をみると血が出ていた。


…リリシアと会えるのは、後、一ヶ月程か。


 罪悪感や切ない気持ちで押し潰される。


…早く言わないとな。

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