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村の訪問

 あの邂逅から数週間が経った。


 私達―精霊にとっては嬉しいことだが、私の胸の奥には、青年に会いたいという、何とも言えないモヤモヤが居座り続けていた。

 不意に呟いてしまった。


「ピクシー、私、村に行っていい?」


 そう言えば、びっくりしたような顔をして、考えるような仕草をした。

 ピクシーは一つ溜息を零し、渋々頷いていた。


『仕方がないですね。分かりましたよ!』


 私はパッと明るくなって、ピクシーに微笑んだ。

 ピクシーは複雑そうな微妙な笑みを浮かべていた。


「ありがとう。ピクシー!」


『まぁ、これでも一応は娘だもん…』


 だんだんと小声になっていくピクシーが可愛らしい。


 家族…そう、精霊にも家族が居る。

 精霊は世界樹から生まれ、育ててくれた人を母と呼ぶ。

 なので、ピクシーもセレナ様も実質、血は繋がってない。

 親子より、友人や先輩後輩に近いかもしれない。


「ふふっ。今から行こう!」


 私は詠唱を呟き、ぶわっと風が舞った。

 それと同時に淡い光が包み込み、私は目を瞑る。


 目を開けば、木製でできた門に石畳が敷かれた地面。

 いつも上から見ていた村に到着していた。


 キョロキョロと辺りを見回すと、門の近くに栗色の髪の青年が目を丸くしていた。


「空から現れた!?」


 青年は後退りをして、私はというと狼狽していた。


…え、え!?こう言う時どうすればいいの?魔法使いましたって言ったら変かな?いや、いや、人間は魔法を使えないから、無理でしょ!ど、どうしよう。


「えっと、あの、柔らかいミルクティー色の髪に青色の瞳の十六歳くらいの青年は居ますか?」


 そう言えば、青年の表情が段々と険しくなっていく。


「えっと、怪しい人じゃありませんよ!えっと、その人に用事があって…。えっと…、ここに居ますか?」


 そう言うと、やれやれ顔で青年が口を開いた。


「“怪しい人ではありません“っていかにも怪しい人なんだよね?どこの村の人なの?」


——ですよね!ど、どうしよう、適当に言う?でも、ここの地域は全然知らないし…、前来た青年も居るかも怪しい。


「お、お願いです…」


 先程から黙っていた、ピクシーが私にしか聞こえないように言う。

 

『もう、諦めたら?居るかも怪しいし、この青年が居る限り、入れないよ』


 ピクシーの言う通りで、居なかったら無駄足となる。

 別に彼のことを少し―いや、大分気になっているだけで、会いたい、話したいがあるだけだし…。


 悩みに悩んだ結果、帰ろうとすれば。


「精霊様?」


 その声は、あの夜聞いた、優しくか細い声だった。

 栗色の髪の青年の後ろに彼が立っていた。

 顔色はまだ青白いが、瞳には柔らかな光が宿っていた。

 私はその言葉に胸が高鳴るのを感じた。


 栗色の髪の青年は目が飛びてそうに目を見開き、彼の元へ駆け寄った。


「え、カイル!?歩いて大丈夫なのか?それより、精霊って!?」


 栗色の髪の青年は大声で話していて、私にも聞こえるほどだった。


…大声で言わないでほしい…。精霊は人に干渉してはいけない。精霊界のルールを破れば、セレナ様やピクシーに迷惑がかかるかもしれないから。


 私が俯くと、何かを察したのか「僕の家で話そう」と言われ、私は彼達の後ろを着いて行くことにした。

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