#05 冒険者ギルド
「これからはいかがなさいますか?」
出された紅茶を飲み終えたとき、ネイが尋ねてきた。勝手が分からないからなんとも言えないところだが……まずは俺自身の強さを把握しないとか。
「この辺にギルドはありますかね?」
「ええ、屋敷を出て真っ直ぐに行けばございます。冒険者になられるのであればダンジョンに行ってみては?」
「ダンジョンか……」
おおよその予想はつく。たぶん、ファンタジーに出てくるようないかにもなヤツだろう。妖精たちに聞いても似たような返事が返ってきた。
「ではまずはそうしますかね。もしかしたらしばらく帰らないかもしれません」
「分かりました。でもいつでもいらしてください。歓迎させていただきますから」
「ありがとうございます。……あ、この服とかは……」
「差し上げますわ。その程度、レイ様のお手伝いにもならないでしょうし」
何から何までありがたい。つまり俺は、あとは強くなってしまえばいいわけだ。簡単なものではなかろうが、不可能でもないはず。
「では行ってきます」
「ええ、お気をつけて」
ネイから短剣を一つだけ貰い、そしてギルドへと向かった。少しずつ、街の雰囲気が騒がしくなっていく。落ち着いていた屋敷周りとはまるで家が違うようだった。
軋む大きな扉を開き、ギルドへ一歩踏み入れる。どこからどこまでもうるさい。酒臭い。下品な笑い声が漂う。“いかにも”な雰囲気だ。良い……こういうのが良いんだ。
大男たちの間を縫って、受付へと歩み寄る。こんな荒れた中、唯一整った服装をしているのだからすぐに分かった。
「冒険者ギルドへようこそ。いかがなさいましたか?」
「登録を頼むよ」
瞬間、1秒か2秒か、この空間が静まり返った。そして溜まったものを吐き出すように、ドッと笑い声が溢れる。
「ギャハハ! おいおい、装備もしてねぇガキが冒険者たぁ笑わせるんじゃねぇよ!」
「坊主! 悪いことは言わねぇから家でママと遊んどけ!」
ムッとしつつもすぐにそんな気持ちは消え失せた。客観的に見て、彼らの言っていることは至極まともだった。俺の年齢は17だ。特にこの世界の者はデカいせいで、たぶん15かその程度に見られている。
「私も……オススメはできませんよ? 冒険者というのは命に関わる職業ですし……」
うるさい笑い声の中、受付の人の澄んだ声が囁いた。やっぱりそういうもんなのかな。
「大丈夫だ。こう見えて俺は強い」
「まぁ……そう仰るのなら止める権利はございませんが……」
彼女は戸惑いつつも1枚の書類を取り出した。これに書けということか。冒険者たちはもう他の話題になっているし、忙しいのか暇なのか……。
「よし、これでどうかな?」
「……はい。書き漏らしはございませんね。ではこれからランクの説明をします」
俺は最下級、つまりFランクからスタートだそうだ。山で薬草を採ったり、弱い魔物を狩ればEランクにはなれるんだとか。それからも依頼を受けたり実力を示せればいいらしいが……。
「俺さ、ダンジョンに行きたいんだけど、どうすればいいのかな?」
「ダンジョン……ですか……。一応、そちらに規則はございません。冒険者であれば誰でも入れます。登録したばかりの方に推奨はできませんが……」
「規則がない?」
「生きるも死ぬも自己責任、それが冒険者です。特に転生者が現れてからは……」
なかなか物騒だが……今は好都合だな。となれば早速、俺はダンジョンに行ってしまってもいいわけだ。警戒すべきは強力な魔物と……犯罪者ってとこかな。一応、ダンジョン内であっても犯罪行為は咎められるようだが……。
「じゃあ俺ダンジョンに行ってくるよ。世話になった」
「無理はなさらないでください。敗走することも恥ではありませんからね」
彼女は冒険者カードを手渡しながらそう話した。俺は死ぬような目には遭う前に逃げ出すが……たぶんプライドの高いヤツらもいるんだろうな。
「私、ファリアと申します。ダンジョンから戻ったら、一度こちらにお越しください」
「ありがとう、ファリアさん」
心配なのかな。それかダンジョン帰りはギルドに寄らなきゃいけないのか……。ま、何はともあれだ。これで俺はダンジョンに行ける。Fランクのカードを握り締め、俺は揚々とギルドを後にした。




