表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/5

#02 ネイ・ヘスマン

「うーん……。見たところ……」


 森、前世では考えられないほどの巨大な木で埋め尽くされていた。世界樹みたいなのもあるのかな?


 思っていた転生とは違ったな。生まれ変わって転移したような……まぁそんなものか。


 まぁまずは人と会わないことには始まらない。俺は根の張った硬い土を踏みしめながら日の光の方向へ歩みを進めた。


 確認すべきは俺のカード、顔、それから雫たちの現状だ。ヘリエス様は俺に対して特別に名をくれたようだから、3人の名前はきっと生前と同じだろう。だから探せないこともないはず……。


「……ん?」


 やや左前方、悲しい声が聞こえた。悲しみと恐怖の混ざった声が。人間の声とは思えないが……なるほど。つまりコレが俺の力なんだな。


「距離は?」


《1キロくらい》


 よし。簡単な応答もできるらしい。俺は脚にめいっぱいの力を込めて走り出した。


「うおっ!?」


 風を切る音が耳を覆った。すごいな……異世界。体感、車よりも速いんじゃないか? それでいて疲れる気配は全くない。


「くっ……“風の刃(ウィンド・カッター)”!」


 ずっと遠く、視界の外側に巨大な怪物と交戦している一団を確認できた。オーガとかオークと呼ばれるようなヤツだろうか。


 おおよそ、普通の人間……日本人が戦えるようなものではなさそうだ。が、今の俺にはできるという謎の確信があった。腹の底から無限に込み上げてくる無敵感が、全身に鳥肌を立たせた。


「よしっ! お前ら! 俺に力を貸せ!」


「な、何者だ!?」


 今までにないワクワクが心を埋め尽くした。この世界なら俺は何だってできる。妹たちを見つけなければならないのに、今この瞬間は俺が俺個人の欲を優先できる。


 両脚に力を込めて2メートルも3メートルも飛び上がり、右の拳を高く上げた。あとはただ、それを思い切りに振り下ろすだけ。


「ぬぉりゃああ!」


「ッ!?」


 柔らかいクッションを殴るような、そんな感覚だった。ただひたすらに爽快感。手を握り、開き、また握り……。力いっぱいに殴っても大して痛まない。


 さて、襲われていたのは複数の馬車と……騎士団的な……護衛か? 本当に異世界なんだな。


「な、何者だ!? お前は!? ……いや、あなたは」


「俺は……えっと……レイ・リオロット。見ての通り人間だよ」


 流石に怖がられてるようだな。十数人で相手していた魔物をほんの一瞬で倒したのだから……。どう説明したら信じてもらえるのか、そんなことを考えていると馬車の中から見目麗しい1人の女性が出てきた。


「リオ様、ですね? 初めまして。私はネイ・ヘスマン、ヘスマン家の当主でございます。ネイとお呼びください」


「はぁ……お貴族様ってことですか?」


「ええ、その認識でいいかと。ここにはあなたを探しに来たんですの。ヘリエス様のお加護を賜りし御仁よ」


 ……なるほど。となると、これはチュートリアル的な扱いか? ヘリエス様が俺が困らないように最初は手助けをしてくれている、というところかな。


「もし良ければ、我が屋敷にいらしては頂けませんか?」


「まぁそりゃいいすけど……道中、いくつか話を聞いてもいいですか? 変な話ではありますが、少しばかり記憶が混濁していまして」


「記憶が? ええ、もちろん。私たちがお手伝いできることであれば何でもお聞きになってください」


 流石に正直に異世界人だと言うわけにもいかないしな。俺の周りを浮かんでいる妖精、目に見えるものではないが、そいつらに怪我人の治癒速度を上げるように頼んでから馬者に乗り込んだ。


「お、なかなか……」


 窓に薄っすらと反射した姿に、“なかなか良い顔じゃん”と、そう言いかけてすぐに口をつぐんだ。自分の姿を賛辞する者がどこにいるというんだ。


 しかし好青年というかなんというか、とにかく爽やかで人の良さそうな容姿だった。髪が薄い赤色なのも異世界っぽいし……服装が少し見窄らしいのが惜しいな。


 ……いや、そんなことは今はどうだっていい。まず把握しなければならないことが多い。


「じゃあネイ、えっと……。少し……因縁がありましてね。異世界人って言うんですかね? 最近はそういう者が多いと聞く」


 踏み込みすぎず、それでいて遠慮はしない。600人も転生したんだ。世界規模で見たら少ないだろうが……何かしらの情報はあるはず。


「最近……というか、5〜6年前でしょうか。世界中で特別大きな力を持つ者達が突如として現れまして……その記憶はあるんで?」


 5〜6年前……。ヘリエス様は俺が最後だと言っていたな。なんで俺だけ遅れたんだ? ……分からないな。


「確かな記憶はない、ってところでしょうか。ただその……見ての通り人間関係には恵まれなくてですね」


 ボロい布切れのような衣服を見せて微笑んだ。おおよそ誰かに襲われたて逃げ出したか、あるいは虐げられていたかのように映るはずだ。


「……確かに、異世界人は巨大な力を持つがゆえに大きな態度を取る方も少なくはありません。おかしな話です。異邦人が、どうして私たちの世界でそのような態度を取れるのか……」


 やっぱり……異世界人と名乗るのはやめておくか。ガビュラの人間と地球の人間との間にはそれなりのわだかまりがあるらしい。


「……あぁ、いや、失礼。彼らのほとんどは転生以前の記憶を持たないらしいので、異世界人であることは関係ないでしょうね」


 難しい話だな。まぁ現地の問題にはできるだけ首を突っ込みたくはないが……。しかしそうか。やはり俺以外の人間も強力なカードを持っているのか。ますます慎重に行動しなければならなそうだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ