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ガンマンの視線

作者: TOMMY
掲載日:2025/11/22

ガンマンは腰のホルスターから拳銃を抜いた。

抜いた瞬間には、もう轟音が街に響き渡り、

弾丸は空を裂いていた。


目にも止まらぬ腰だめ撃ち。


人々は何が起こったのか分からず、

ただ硬直したまま視線を動かす。


テーブルに置かれていたはずのビール瓶は、

粉々に砕け散っている。

沈黙のあと漏れ出たのは拍手ではなく、

安堵の吐息だった。


だがすぐに、誰かが震える手を叩きはじめると、

他の者たちもそれに続いて拍手するしかなかった。


彼は何かを確かめるように目を細めた。

そして、「もう一度だ」と低く言い放った。

砕けたガラス片が片付けられ、新しい瓶が置かれる。


人々は息を殺し、視線を瓶から逸らせない。

時間が引き延ばされるように流れる。

空気は張りつめ、誰かの喉が鳴る音さえ響く。


だが、瓶はいつまで経っても割れない。

震えを堪えきれなくなった少女が、

テーブルの下で指をぎゅっと握りしめた。

人々は恐る恐るガンマンに視線を移す。


その刹那、雷鳴のような衝撃音が炸裂する。


目をテーブルに戻した時には、瓶は無残に砕け、

破片が床に散っていた。


ガンマンは涼しい顔のまま拳銃をホルスターに戻す。

人々は恐怖に突き動かされるように拍手を送った。


称賛ではない。

次に撃たれるのが自分でないことへの、

震えながらの祈りだった。


ガンマンは小さく舌打ちし、

静まり返った酒場を見渡した。

砕けた瓶の破片が床で光り、拍手はすでに恐怖の震えに変わっている。


「……お前ら、本当に運がいい」


その声に、人々の肩がびくりと跳ねた。


ガンマンはゆっくりと指先を掲げる。

その指が向いたのは──自分の拳銃。


「実はさっきから……弾、入ってねえんだ」


酒場中が凍りつく。

誰も何をどう理解すればいいのか分からない。


ガンマンは肩をすくめ、空になったシリンダーを指で回した。


「だから言ったろ。お前ら、運がいいって」


人々は顔を見合わせる。

次の瞬間、テーブルの下や椅子の影から、

安堵と絶望が同時に崩れ落ちるような呻き声が湧き上がった。


ガンマンは扉へ向かいながら、帽子のつばを軽く押した。


「瓶が勝手に割れた理由? ……知らねえよ。

この街、俺より腕のいい“奴”がいるってことだ」


扉が閉まったあと、誰も動けなかった。

恐怖からではない。


──自分たちが、誰に拍手していたのか、分からなくなったからだ。


ガンマンの視線は、見えない標的を見つめていた。

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